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 クレディセゾンの場合

ここがポイント
 取引履歴の開示は1991年5月以降分だけ
 
裁判では以前は変な理屈はこねなかったが、近年は変な理屈をこね頑強に抵抗する業者に変貌している
   
  クレディセゾンは、取引履歴の開示は1991年(平成3年)5月からで、それ以前の取引履歴は廃棄したと主張して開示しません。
 クレディセゾンは、昔は「西武クレジット」という会社で、自動引き落としの古い預金通帳を持っている場合、「セイブクレジット」と記載されています。
 昔は、1991年5月以前について、預金通帳の記載や、クレディセゾン自身がケースによっては開示していた「顧客判定画面」情報に基づいて行った推計でも和解できたりしましたが、近年は預金通帳の記載があってもそれはショッピングが含まれているからキャッシングの返済を意味しないと主張して推計を否認し、顧客判定画面情報も開示しなくなり、裁判上も変な理屈を言って徹底抗戦するという姿勢に変わりました。現在では、過払い金請求に対して頑強に抵抗する業者と位置づけられます。

  クレディセゾンの開示

 クレディセゾンが説明しているところによれば、クレディセゾンは1991年(平成3年)5月11日以降の取引履歴を保存しているということです。
 それで、1991年(平成3年)5月10日以前から取引がある人の場合は、1991年(平成3年)5月10日時点の約定残高とその後の取引履歴が、最初から利息制限法に引き直した形で開示されます。約定利率による計算書は開示しません。裁判上開示を求めても出してこないのがふつうです(裁判官も興味を持ち強く提出を求めたために出してきた例をこのページの末尾で紹介します)。
 なお、入会時期の情報は、カードにもよりますが、カード上に記載されていることが多いです。

  顧客判定画面:かつては有効な材料でしたが

 クレディセゾンの場合は、取引履歴とは別に常に更新され続ける最新の顧客情報として、顧客判定画面という情報があり、これに入会年月、キャッシング・ショッピング別の利用総額(つまり借入総額)、利用回数(借入回数)、累計入金額(返済総額)、請求回数(返済回数)が掲載されていました。利用総額と累計入金額は1000円未満切り上げのデータですが。
 この顧客判定画面の情報があると、このデータから開示済み部分の借入総額、借入回数、返済総額、返済回数を差し引くことで、未開示部分の借入総額、借入回数、返済総額、返済回数が計算できます。これに約定利率が定まれば、未開示部分の推計ができることになります。借入総額と返済総額だけでなく借入回数、返済回数も特定されるので、この条件をすべて満たす推計は、理論上は多数あり得るでしょうが、かなり狭い幅の中でしか動かせません。実際に推計するのはけっこう面倒な作業でしたが、根気よくやれば精度よく推計ができることがわりとありました。
 顧客判定画面情報に基づいて私が精度よく推計できたケースでは、概ねそれに沿った和解ができました。
 昔は、裁判前に担当者に電話で請求したらその数字を教えてくれたり、裁判上請求したら出してきていたのですが、次第に提出を拒否するようになり、現在は、顧客判定画面情報は2018年2月7日から3月2日にかけて廃棄したと主張して提出を拒否するようになっています。実際に廃棄したのかどうかは私にはわかりませんが、裁判でそう主張した以上、今後は提出してくることはないと思います。

  裁判での主張

従来の姿勢
 クレディセゾンは、以前は裁判で特に変な主張はしてきませんでした。裁判上の争点は、ほとんどの場合、未開示部分の推計問題くらいでした。
 その意味でも、裁判前に顧客判定画面情報を出してくれればお互いに手間がかからなくていいと思っていたのですが。

近年の姿勢
 近年は、クレディセゾンも、姿勢が変わり、三菱UFJニコスと同様、あるいはそれ以上に変に理屈をこねる主張をするようになっています。
 近年、クレディセゾンが執念深く主張している1回払いキャッシングサービスの取引の一連性については、「取引の分断・一連性:1回払いキャッシングサービス」で説明しています。私は、本来、勝てる(一連性が認められる)論点だと思っていますし、一連性を認める判決も取っていますが、一連性を認めない下級審判決も多く出ていて、現在では非常に熾烈な厳しい論点になっています。
 2022年5月提訴の事件で、クレディセゾンから、借入初日算入(借入日と次回返済日の両方で利息発生)と遅延損害金利率適用の主張がなされました。それで、当時のカード規約と約定計算書の提出を求め、通常は約定計算書は提出してこないのですが、裁判官も興味を持ち提出を強く求めたので、私の経験上初めて、クレディセゾンから約定計算書が提出されました。提出までに2か月以上もかかったところからして、実際の取引時に作成していたものかどうかは疑問で、裁判用につじつま合わせをして作成したことが疑われますが、その計算書でチェックすると、約定利率による利息計算で借入日と返済日双方分の利息は発生させず、さらには返済が遅れたとき(このケースでは遅れはほとんどなかったのですが)も遅延損害金利率ではなく通常利率で計算していました(そもそもカード規約上も、20日以上の相当な期間を定めた書面による催告をしない限り遅延損害金は残高全体に対してではなくその返済日に支払うべき金額つまりリボ払いの1回分に対してしか発生しないとされているのですが、そのリボ1回分についての遅延損害金も取っていませんでした)。実際の取引をまったく反映しない主張を何らの証拠の裏付けもなく行っていたのです。ここまで無責任な主張がなされたのは驚きでした(この事件では、裁判所の提示に従い和解したので判決は得ていませんが)。
 このように、およそ無理なことでもあれこれ主張して抵抗するのが、現在のクレディセゾンの訴訟対応です。

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