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    ◆過払い金返還請求の話
  アイフルの場合

 アイフルは、現在は債務整理の交渉等は滋賀県のアシストセンターで集中して行っていますが、従来は支店対応でしたし、和解後の分割払いの管理は支店で行っていて、その支店の担当者にはずいぶんと態度の悪いのが時々いて、弁護士相手でもこういう態度なのだから一般人相手にはかなり強硬な取立をするのだろうなと感じることがままありました。アシストセンターの担当者は丁寧なんですけどね。業務停止処分の後は、私の個人的経験では強硬な電話が来ることはなくなりましたけど。

<業務停止処分>
 アイフルは、借り主名義の委任状を勝手に作成して個人情報を取得したり、返済義務のない家族に取立をしたりしたことを理由に全店舗で2006年5月8日から10日まで、違反行為のあった店舗ではさらに長い期間、業務停止処分を受けました。

  アイフルの取引履歴開示

 アイフルに取引履歴開示請求をすると、アシストセンターから写真のような書式で開示されます。「計算書」というタイトルですが、利息制限法引き直し計算書ではなく、約定利率での取引履歴です。アイフルの取引履歴は、アコムやアエルとは違って、貸付と入金が別の列になっていますし、一番最後に貸付額や入金額の合計額も書かれていて入力の検算もしやすく、事務員さんに優しい取引履歴といえるでしょう。その点はありがたいと思います。
アイフルの取引履歴
 以前アイフルに対して裁判を起こしたときにアイフル側の代理人から主張されたところによれば、アイフルでもコンピュータ化の時期が支店によって異なるとかいうことでした。この写真のケースでは1988年4月からの開示になっています。おおかたそのあたりの時期からはコンピュータのデータで取引履歴が開示されています。
 1988年より前から取引のあるケースをそれほどやったわけではありませんが、以前は、私の経験では、こういうふうに取引の途中からの開示の場合は、冒頭の残高0で計算した過払い金(もちろん法定利息年5%付き)であっさり和解できていました。
 しかし、過払い金請求が増えたこともあってか、アイフルも和解が渋くなっています。特に完済後再借入のケースについては、最近、完済した後次の借入までの間がわずか1日あいているだけのケースで、完済時までの過払い金を次の借入から差し引く一本計算では和解できないと拒否されました。「最高裁の2008年1月18日のケースでも3年間があいたケースで他の事情と総合的に考慮して判断するって言ってるんだし、1日しか開いてないケースなんて裁判所でアイフルの主張が通ることはおよそあり得ないでしょ」と言いましたが、上が決めたことなのでの一点張りでした。ま、すぐ裁判起こしましたけどね。なんか融通効かない会社になってきていますね。

  裁判対応

 以前は、交渉での和解でも鷹揚な態度を見せていたアイフルが、次第に交渉で頑なになってきていたのですが、それでも2008年までは、私の経験上は、裁判を起こすとあっさり(慰謝料や弁護士費用はともかく)過払い金についてはこちらの主張通りに払う和解をしていました。
2009年〜2010年の対応
 ところが、2008年12月に提訴した事件で、2009年1月15日付の答弁書が送られてきてビックリ。複数原告で起こした事件について原告1人ごとに1通ずつに分けて答弁書を出してきましたが、全部本文が21枚とか22枚。21枚目の2行目までは全部同文で、最後のまとめだけ原告ごとに少し長さが違います。21枚目の2行目までは原告ごとの個別事情は一切出てきませんから、おそらくすべての訴訟で全く同文のこの答弁書を出すことにしたのでしょう。
 その後、若干の修正があり、2009年8月12日付で出てきた答弁書では、3ページから19ページ半ばまでが全部同文。その後、完済後再借入まで間があいている原告には過払い金がその後の再借入に充当されないというおなじみの主張(これについては、「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」で説明しています)、過払いとなってから10年以上経っている原告には最高裁で明確に否定されたにもかかわらずまだ過払い金の消滅時効は個別に進行し取引継続中でも10年経ったら時効消滅すると主張していました(アンビリーバボー:し〜んじられな〜い!)。
 その後さらに修正があり、2009年12月7日付で出てきた答弁書は、少しスリムになって3ページから10ページ半ばまでが全部同文でした。
 共通部分(最近のバージョンの定型答弁書3ページから10ページ)の中身は、アイフルは「悪意の受益者」ではない(だから過払い金に法定利息を付ける必要はない)、アイフルは法人税を支払ったため過払い金のうち45%相当分は現存しないので返還義務がない、悪意の受益者が支払うべき過払い金に対する法定利息は過払い金発生時からは発生しないの3点です。
 「悪意」については、最近のバージョンでは、それまでのバージョンとかなり変更され、最高裁第2小法廷2009年7月10日判決の理屈(これについては、詳しくは「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」の「悪意の時期・悪意を推定されない特段の事情」の項目で説明しています)が取り入れられています。この点は少し学習したようですね(でも、同じ内容の最高裁第3小法廷2009年7月14日判決は全く引用されていないのはなぜ?)。この最高裁判決で、2006年1月13日以前の貸金業者の悪意の判断では、みなし任意弁済(これについては、詳しくは「みなし任意弁済をめぐる闘い」を読んでください)の成立要件のうち、任意性が期限の利益喪失約款があるために満たされない(この点については最高裁2006年1月13日判決で明らかにされました。「みなし任意弁済の適用の余地はほぼなくなりました」を読んでください)以外の要件がすべて満たされていれば悪意の推定が働かず、満たしていない要件がある場合は、「下級審の裁判例及び学説の大多数」がその貸金業者の実務がその要件を満たしていないとは言えないという立場であったときには悪意の推定が働かないという考えが示されています(ちょっと、素人にはややこしすぎますね)。アイフルは、このみなし任意弁済の成立要件のうちキーポイントになる17条書面(契約書等)、18条書面(受取証書)について、1988年11月1日からのある時期にアイフルが使用していた書式を例に挙げて、貸金業法17条、18条の記載事項が書かれていたから、それぞれの借主に交付した書面の写しを提出しなくても、任意性以外の要件を満たしていることが立証できるという主張をしています。しかし、みなし任意弁済の適用要件については、すべて貸金業者に立証責任があるというのが貸金業法制定時からの確立された実務で、みなし任意弁済が認められるためには貸金業者がそれぞれの借主に交付した17条書面、18条書面の控えを裁判所に提出することが前提です。現にこれまでみなし任意弁済について執拗に主張してきた貸金業者(エイワやシティズ)はその控えを保管して現実に裁判所に証拠提出していたからこそ、一定の範囲でみなし任意弁済の成立を認められてきたのです。貸金業法がみなし任意弁済の適用要件としているのは、17条書面、18条書面の「書式の作成」ではなく規定を満たした「書面の交付」なのです。アイフルの主張は、みなし任意弁済と17条書面、18条書面についての確立された実務を無視したものです。
 法人税云々の話は、貸金業者の中でもアイフルだけが言っているもので、裁判所にまともに扱われることは考えられませんし、相手をする気にもなれません。まぁ簡単に言っておくと、そもそも返還するのが「現存利益」でいいのは善意の不当利得者であってアイフルは悪意の受益者ですから、利益が現存しなかったとしても関係ありません。それにグレイゾーン金利の支払を受けた時点でその収入で払った法人税は、遅くとも過払い金の返還時点での損金処理(引当金積立時点で損金処理が認められるならばその損金処理)によって戻ってくる勘定になっている(その年度の課税額が減少することで調整されるという意味で必ずしも現実に還付されるということではないですが)わけで、税法上すでに手当てされているわけですからアイフルのいう「経済的合理性の観点」から言えば過払い債権者に負担させることは間違いです。
 過払い法定利息の発生時期については、基本契約に基づく継続的金銭消費貸借取引では消滅時効は取引終了時まで進行しないとした一連の最高裁判決をきっかけに、多くの消費者金融が、過払い法定利息も取引終了まで発生しないというこじつけの主張をしてきました。アイフルの主張も基本的に全く同じです。この主張は、最初から無理な主張でしたが、最高裁第2小法廷2009年9月4日判決で、明確に否定されました(これについては、「過払い金返還請求訴訟をしたい方へ」で説明しています)。それから3か月が経っても、最高裁判決を無視して、無理な主張をし続けるセンスというか無知ぶりには驚きます。
 過払い金の消滅時効の個別進行説については、「CFJの場合」でも指摘したように、2009年1月22日、最高裁第1小法廷が、大方の予想通りに、一定限度額内で繰り返し貸し借りを継続する基本契約に基づく取引の継続中は過払い金返還請求権の消滅時効は進行しない、過払い金返還請求権の消滅時効は特段の事情がない限り取引が終了した時点から進行すると判断して決着を付けました。その後2009年3月3日に最高裁第3小法廷も同じ内容の判決を出し(田原睦夫裁判官だけが反対意見を書いていますが)、3月6日には最高裁第2小法廷も同じ内容の判決を出してすべての小法廷で一致した確立された最高裁判例となりました。その後でもなお、アイフルには田原睦夫裁判官の少数意見が正しいと主張しているのです。しかも、消滅時効の進行では最高裁第1小法廷の2009年1月22日判決は誤りだと主張しながら、過払い利息の発生時期では最高裁第1小法廷2009年1月22日判決を根拠に主張しています(定型答弁書10ページ:最近のバージョンでもなぜかやはり10ページ)。書いてる人は矛盾を感じない/恥ずかしくないんでしょうか。
2011年〜2012年の対応
 2011年になってから、アイフルはそれまで定型答弁書で書いてきたことを、答弁書では長々と書かずに、第1準備書面で書くようになりました。これまで以上に引き延ばしに力点を置いています。アイフルの本社が京都なので、東京地裁に提訴した場合に、東京23区内に住所がない原告や請求額が140万円未満の原告については分離して原告住所地の裁判所や簡易裁判所に移送しろという申立をしてきます(本社が東京の消費者金融だと、原告の住所に関係なく東京に土地管轄があるのでこういう主張はできません)。これをやられると期日が1回空転する上に、裁判所も実際に移送してしまったりするので、無意味に時間がかかります。そういうこともあって、私は最近は遠くの依頼者の方から依頼を受けるときは、アイフルについては依頼者の地元の裁判所に提訴することになり、内容的なことはすべて私がやりますが裁判所への出廷だけはお願いすることになります、裁判官から何か聞かれたらすべて次回までに弁護士と相談して対応するといえばいいですからという約束で受けて、依頼者の地元の裁判所に提訴しています。その方が東京地裁や東京簡裁より早く判決をくれたりしますし(私の方でアイフルのいつも出してくる主張に対して先回りして反論し、アイフルに何回期日を与えても無駄だから速やかに判決が欲しいという書面を出しておいたら、地方の地裁や簡裁は1回・2回で結審して判決をくれたりします)。
 東京だと、アイフル側から「支配人」として出廷する人物(とても支配人の権限があるとは思えない人)がねばるのと裁判官がなかなか判決を書きたがらない傾向があるのとで何度か口頭弁論を繰り返すことになります。でも、2011年9月提訴の事案で2012年4月までかけて延々やった事案でも、2006年1月13日以降に初めて過払いになったケースなのに2006年1月13日判決以前の17条書面の要件適合性とかそれで悪意の受益者じゃない特段の事情があるとか、まったく内容を理解していないとしか思えないどこかから引き写してきた主張を続けるだけ(最高裁2006年1月13日第二小法廷判決で、期限の利益喪失約款がある契約での返済は任意性がなくみなし任意弁済の適用がないとされたわけだから、それ以降について悪意じゃないというのは基本的に無理だし、仮にその主張をしたいなら2006年1月13日以降に期限の利益喪失約款をどうしたのか主張しないと話にならない)。裁判官からその点を指摘されて出してきた証拠にも、どこにも期限の利益喪失約款がどう変わったのか書かれてなかったり、自分が(形式上)主張していることの意味もわかっていない様子がありあり。アイフルの訴訟対応は、引き延ばし以外何も考えていないとしか思えません。

  事業再生ADRへの申立と支払状況

 アイフルは、2009年9月24日、事業再生ADR手続の利用申請を行い、受理されました。これは会社更生や民事再生などの法的(強制的)な手続ではなく、私的な整理で、内容的にはアイフルに融資している金融機関に対して返済の猶予や条件変更を求めるものです。
 ですから、過払い債権者に対しては影響はありません。
 しかし、アイフル側はそれを理由に、和解案を出せないとか提案する和解条件を切り下げたり、また裁判の引き延ばしを図ったりしているようです。
 私が、それ以前に提訴して9月に第1回期日で弁論終結して2009年10月1日に判決をもらった事件では、アイフルに判決が送達されてすぐの10月6日にアイフルから、8日に判決通り払うから支払日までの法定利息付きの金額と振込口座を教えてくれと言ってきて、その通りに10月8日に全額の支払いがありました。その事件で訴訟費用(印紙代等)も判決に従って計算して請求したら、全額支払ってきました。
 その後も、判決を取った事案では、判決直後にこちらに電話してきて少しでも負けてくれと言い続けるので、すぐ払うなら判決日以降の利息は負けてやる(2〜3週間分の利息だけカット)とかいうと、それですぐに払ってきたりしていました。
 つい最近、2012年4月27日判決のケースでも、私の留守中、5月7日に電話が来ていたので、きっとまた負けてくれという話だろうから、次に電話してきたら「伊東は一切負けないといっている」と言ってくれと事務員さんに伝えて外出したところ、それを聞いたアイフルの担当者は、最初はそれなら控訴を検討すると言って電話を切ったそうですが、その日のうちに5月10日に判決通り(支払日までの過払い利息もつけて)払うといってきたそうで、2012年5月10日その通りに入金がありました。、
 事業再生ADRの申立やリストラの報道で浮き足立っている向きもありますが、過払い債権者には法的な枠組みとしては影響はありませんし、アイフルは実際には外資系金融機関や社債権者には全額返済していると聞きます。過払い債権者が負けてやる理由などないと思います。
 私も、武富士やSFコーポレーションで、全件判決主義で行って突然倒産されて支払を受けられなかったことから、和解案は依頼者に伝えて私は妥協する必要はないと考えるがいつ倒産するかは外部からは判断できないので依頼者が和解したいというのなら和解するという方針にしていますから、依頼者の希望によっては、早期の支払を条件に減額和解するケースもあります。でもその早期というのも、判決が出ていないと2か月とか3か月先の話になったりしますので、私の感覚では、和解の話に付き合って引き延ばされたり減額するより、さっさと判決を取った方が早くきちんと回収できると思っています(実際、裁判中に和解した人よりも和解を蹴って判決を取った人の方が先に支払われることもあります。和解した人は減額した上に遅くなって踏んだり蹴ったりだと思うのですが)。


 不動産担保の話は「もっと詳しい過払い金請求の話」に移しました。→「不動産担保取引」

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