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  ◆活動報告:原発裁判(六ヶ所)◆
   六ヶ所再処理工場が破壊される航空機衝突条件

引用文献
 このページは、「六ヶ所再処理工場が破壊される航空機衝突条件」のページで引用している文献の一部を掲載しています。
1.甲D第174号証:後藤政志さんの鑑定意見書は現時点ではそのものの掲載は見合わせています。 
2.甲D第175号証:私が作成した計算結果報告書
 準備書面で大半は説明済みですが、一応本文全文を掲載します。
 別紙の計算結果は準備書面のページ(六ヶ所再処理工場が破壊される航空機衝突条件)で貼り付け済みですので、こちらでは省略します。
3.甲D第53号証:「衝突速度条件の二段階設定に係る問題点の検討」
 再処理工場と並行して安全審査が行われていた高レベル放射性廃棄物貯蔵施設の行政庁審査資料に入っていた資料で、その記載内容や一緒に入っていたグラフの記載からして実質的には再処理工場についての資料と考えられます。
2.甲D第175号証
第1 はじめに
 本件再処理工場の安全審査、設計及び工事方法認可では、本件再処理工場の天井スラブないし壁が航空機落下時のエンジン衝突による局部破壊に耐えられるよう防護設計を行うため、F16のエンジン1基の衝突とF4EJ改のエンジン2基の衝突について、貫通限界厚さについてはDegen式を、裏面剥離限界厚さについてはChang式を用いて計算して評価している。
 この計算式、特にDegen式については貫通限界厚さを過小評価するものとして原告らは従前から批判しているが、本報告書では、仮に本件安全審査・設計及び工事方法認可で採用された計算方法により衝突速度のみを変化させて計算した場合にどの速度で裏面剥離、貫通を生じるかを明らかにするものである。
第2 Degen式による貫通限界厚さの計算
 1 計算方法
 本件再処理工場の設計及び工事方法認可申請書の「航空機に対する防護設計に関する説明書」では、エンジンの衝突による貫通限界厚さの計算方法を次のように説明している。

 ここでは、Degen式の飛来物形状係数を無前提に0.72としている。0.72は飛来物の衝突面が「平坦」である場合の係数であり、エンジンが完全に水平か完全に垂直に衝突する場合であれば平坦と評価できるかもしれないが、ほとんどの衝突では斜めに衝突するはずであるからこれは明らかに過小評価につながる計算方法である。しかし、本計算報告書では、そういった過小評価も含めて本件安全審査で用いられた計算方法を用いて計算する。
 もっとも、ここでDegen式で求められた貫通限界厚さに対して最終的に乗じられている0.65の柔飛来物低減係数は、Degen式自体に含まれるものではなく、本件再処理工場等(ウラン濃縮工場でも同様)の設計に用いられた独自の係数である。そして、この係数について、ウラン濃縮工場の安全審査の際の資料(被告は「メモ」と称してウラン濃縮工場の裁判で長きにわたりその存在を隠し続け開示を拒み続けていた)では、以下のように説明されていた。

 ここでは、柔飛来物低減係数は「速度が小さくなると低減効果が大きくなる傾向がある」とされ、衝突速度が150m/sのときの実験値の中央値が0.65、215m/sのときの実験値の中央値は0.75とされ、かつその中央値はグラフ上直線で表現されている。
 そうすると、本件安全審査や設工認では衝突速度がF16につき150m/s、F4EJ改につき155m/sとされたが故に、柔飛来物低減係数が0.65とされたに過ぎず、衝突速度がそれより大きくなれば上記ウラン濃縮工場の安全審査資料の図にそった柔飛来物低減係数が採用されるべきと考えられる。
 そこで、本計算報告書では、Degen式による貫通限界厚さの計算後の柔飛来物低減係数については、安全審査の立場として、0.65に固定したものと、衝突速度が上がるにつれて漸増する(150m/sで0.65、215m/sで0.75の2点を結んだ直線上の数値を採用する)ものの2つの計算を示すことにする(ウラン濃縮工場の安全審査資料を前提とすれば、安全審査の考え方としても、後者の方がより正しいはずである)。
 なお、本計算結果報告書においては、単位の換算では1in(インチ)=2.54cm、1ft(フィート)=30.48cm(0.3048m)、1lb(ポンド)=0.453592kgを用い、計算途中での端数処理(切り捨て・四捨五入等)は一切行わない(Degen式では計算途上の飛来物密度及びx/dを便宜上示すが、ここでもエクセルのセルの幅で表示上は最終桁の下の桁で四捨五入して表示されるが、計算上は端数処理していない)。
 2 貫通限界厚さの計算結果
 1で述べた通りの式をエクセルに入れ、衝突速度を安全審査で用いた150m/sから5m/s刻みで大きくして行くと、柔飛来物低減係数を0.65に固定した場合のF16のエンジン1基の評価は別紙1−1、F4EJ改のエンジン2基の評価は別紙1−2の通りとなる。
 本件再処理工場の設計及び工事方法の認可申請書の計算結果はF16のエンジン1基の評価で74.8cm、F4EJ改エンジン2基の評価で91.6cmとなっており、前者は別紙1−1の計算結果(衝突速度150m/s)74.75cm、後者は別紙1−2の計算結果(衝突速度155m/s)91.59cmと一致している。
 F16のエンジン1基の評価では、260m/sで115cmを超え、275m/sで120cmを超え、290m/sで125cmを超え、305m/sで130cmを超え、335m/sで140cmを超える。
 F4EJ改のエンジン2基の評価では、205m/sで115cmを超え、220m/sで120cmを超え、230m/sで125cmを超え、240m/sで130cmを超え、265m/sで140cmを超え、285m/sで150cmを超え、310m/sで160cmを超え、335m/sで170cmを超える。
 柔飛来物係数をウラン濃縮工場安全審査資料に従い漸増した場合の計算結果は、F16のエンジン1基の評価が別紙2−1、F4EJ改のエンジン2基の評価が別紙2−2の通りとなる。
 F16のエンジン1基の評価では、215m/sで115cmを超え、225m/sで120cmを超え、230m/sで125cmを超え、240m/sで130cmを超え、255m/sで140cmを超え、270m/sで150cmを超え、280m/sで160cmを超え、295m/sで170cmを超え、310m/sで180cmを超え、335m/sでは200cmをも超える。
 F4EJ改のエンジン2基の評価では、190m/sで115cmを超え、195m/sで120cmを超え、200m/sで125cmを超え、205m/sで130cmを超え、220m/sで140cmを超え、230m/sで150cmを超え、245m/sで160cmを超え、255m/sで170cmを超え、265m/sで180cmを超え、290m/sでは200cmをも超える。
第3 Chang式による裏面剥離限界厚さの計算
 1 計算方法

 本件再処理工場の設計及び工事方法認可申請書の「航空機に対する防護設計に関する説明書」では、エンジンの衝突による裏面剥離限界厚さの計算方法を次のように説明している。

 高レベル廃棄物貯蔵施設の安全審査資料には、次の通りこれをメートル法換算した式もあるので、本計算報告書では、これを用いることにしたい。

 本件再処理工場の設工認においてChang式に独自に付け加えられている「飛来物係数」については十分な説明がなく、とりわけ、F4EJ改についてはなぜ0.55を採用するのかについては何ら説明がなく、結果を操作する(F4EJ改のエンジン2基の評価でも基準をクリアする結果を出す)目的と疑われるが、本計算報告書では、それでもなお、本件安全審査・設工認で行われたように、Chang式による裏面剥離限界厚さにあえてF16のエンジン1基では0.6、F4EJ改のエンジン2基の評価では0.55を乗じた数値を算出することにする。
 2 計算結果
 1で述べたChang式による計算方法のメートル法換算式をエクセルに入れ、衝突速度を安全審査で用いた150m/sから5m/s刻みで大きくして行くと、F16のエンジン1基の評価は別紙3−1、F4EJ改のエンジン2基の評価は別紙3−2の通りとなる。
 本件再処理工場の設計及び工事方法の認可申請書の計算結果はF16のエンジン1基の評価で114.6cm、F4EJ改エンジン2基の評価で127.4cmとなっており、前者は別紙3−1の計算結果(衝突速度150m/s)114.53cm、後者は別紙3−2の計算結果(衝突速度155m/s)127.39cmと一致している(前者は小数点以下で若干の違いがあるが、端数処理レベルの問題と考えられる)。
 F16のエンジン1基の評価では、155m/sで115cmを超え、165m/sで120cmを超え、175m/sで125cmを超え、185m/sで130cmを超え、205m/sで140cmを超え、225m/sで150cmを超え、250m/sで160cmを超え、275m/sで170cmを超え、295m/sで180cmを超え、345m/sでは200cmをも超える。
 F4EJ改のエンジン2基の評価では、150m/sですでに120cmを超え、155m/sで125cmを超え、160m/sで130cmを超え、180m/sで140cmを超え、200m/sで150cmを超え、220m/sで160cmを超え、240m/sで170cmを超え、260m/sで180cmを超え、305m/sでは200cmをも超える。
第4 計算結果のまとめ
 1 柔飛来物低減係数0.65固定、F16のエンジン1基の評価(最小)

 壁・天井厚115cm(例えば分析建屋外壁の一部、非常用電源建屋防護扉):155m/sで裏面剥離、260m/sで貫通
 壁・天井厚120cm(例えばガラス固化建屋、使用済み燃料受入・貯蔵建屋の外壁及び天井スラブの大部分、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部):165m/sで裏面剥離、275m/sで貫通
 壁・天井厚125cm(例えば分離建屋・精製建屋の防護ハッチ、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部、非常用電源建屋の天井スラブ):175m/sで裏面剥離、290m/sで貫通
 壁・天井厚130cm(例えば分析建屋天井スラブの一部、第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の外壁):185m/sで裏面剥離、305m/sで貫通
 壁・天井厚140cm(例えばガラス固化建屋の天井スラブの一部):205m/sで裏面剥離、335m/sで貫通
 2 柔飛来物低減係数0.65固定、F4EJ改のエンジン2基の評価
 壁・天井厚115cm(例えば分析建屋外壁の一部、非常用電源建屋防護扉):150m/sですでに裏面剥離、205m/sで貫通
 壁・天井厚120cm(例えばガラス固化建屋、使用済み燃料受入・貯蔵建屋の外壁及び天井スラブの大部分、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部):150m/sですでに裏面剥離、220m/sで貫通
 壁・天井厚125cm(例えば分離建屋・精製建屋の防護ハッチ、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部、非常用電源建屋の天井スラブ):155m/sで裏面剥離、230m/sで貫通
 壁・天井厚130cm(例えば分析建屋天井スラブの一部、第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の外壁):160m/sで裏面剥離、240m/sで貫通
 壁・天井厚140cm(例えばガラス固化建屋の天井スラブの一部):180m/sで裏面剥離、265m/sで貫通
 壁・天井厚150cm(例えば建屋間洞道の一部):200m/sで裏面剥離、285m/sで貫通
 壁・天井厚165cm(例えば建屋間洞道の一部):230m/sで裏面剥離、325m/sで貫通
 壁・天井厚170cm(例えば第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の天井スラブの一部、建屋間洞道の一部):240m/sで裏面剥離、335m/sで貫通
 3 柔飛来物低減係数漸増、F16のエンジン1基の評価
 壁・天井厚115cm(例えば分析建屋外壁の一部、非常用電源建屋防護扉):155m/sで裏面剥離、215m/sで貫通
 壁・天井厚120cm(例えばガラス固化建屋、使用済み燃料受入・貯蔵建屋の外壁及び天井スラブの大部分、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部):165m/sで裏面剥離、225m/sで貫通
 壁・天井厚125cm(例えば分離建屋・精製建屋の防護ハッチ、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部、非常用電源建屋の天井スラブ):175m/sで裏面剥離、230m/sで貫通
 壁・天井厚130cm(例えば分析建屋天井スラブの一部、第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の外壁):185m/sで裏面剥離、240m/sで貫通
 壁・天井厚140cm(例えばガラス固化建屋の天井スラブの一部):205m/sで裏面剥離、255m/sで貫通
 壁・天井厚150cm(例えば建屋間洞道の一部):225m/sで裏面剥離、270m/sで貫通
 壁・天井厚165cm(例えば建屋間洞道の一部)260m/sで裏面剥離、280m/sで貫通
 壁・天井厚170cm(例えば第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の天井スラブの一部、建屋間洞道の一部):275m/sで裏面剥離、295m/sで貫通
 壁・天井厚180cm(建屋間洞道の最も厚い部分):295m/sで裏面剥離、310m/sで貫通
 4 柔飛来物低減係数漸増、F4EJ改のエンジン2基の評価(最大)
 壁・天井厚115cm(例えば分析建屋外壁の一部、非常用電源建屋防護扉):150m/sですでに裏面剥離、190m/sで貫通
 壁・天井厚120cm(例えばガラス固化建屋、使用済み燃料受入・貯蔵建屋の外壁及び天井スラブの大部分、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部):150m/sですでに裏面剥離、195m/sで貫通
 壁・天井厚125cm(例えば分離建屋・精製建屋の防護ハッチ、高レベル廃液貯蔵建屋、前処理建屋の外壁及び天井スラブの一部、非常用電源建屋の天井スラブ):155m/sで裏面剥離、200m/sで貫通
 壁・天井厚130cm(例えば分析建屋天井スラブの一部、第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の外壁):160m/sで裏面剥離、205m/sで貫通
 壁・天井厚140cm(例えばガラス固化建屋の天井スラブの一部):180m/sで裏面剥離、220m/sで貫通
 壁・天井厚150cm(例えば建屋間洞道の一部):200m/sで裏面剥離、230m/sで貫通
 壁・天井厚165cm(例えば建屋間洞道の一部):230m/sで裏面剥離、250m/sで貫通
 壁・天井厚170cm(例えば第1ガラス固化体貯蔵建屋東棟の天井スラブの一部、建屋間洞道の一部):240m/sで裏面剥離、255m/sで貫通
 壁・天井厚180cm(建屋間洞道の最も厚い部分):260m/sで裏面剥離、265m/sで貫通
 5 まとめ
 本件再処理工場の事故想定において重要な意味を持つ主要建屋の多くにおいては、航空機防護にあたって検討すべき壁・天井厚は125cmまでである。この版厚125cmの壁・天井は、柔飛来物低減係数をウラン濃縮工場の安全審査参考資料のデータによって漸増させた場合のF4EJ改エンジン2基の評価では200m/sで、同様の場合のF16のエンジン1基の評価及び柔飛来物低減係数を0.65に固定した場合のF4EJ改エンジン2基の評価ではいずれも230m/sで、最も評価が小さくなる柔飛来物低減係数を0.65に固定した場合のF16のエンジン1基の評価では290m/sでエンジンが貫通するに至る。(裏面剥離については、F4EJ改エンジン2基の評価では155m/sで、F16のエンジン1基の評価では175m/sで裏面剥離に至る)
3.甲D第53号証
 この資料は、高レベル放射性廃棄物貯蔵施設の行政庁審査資料に入っていたものです。
 六ヶ所村核燃料サイクル施設訴訟で原告(住民)側は、すべての施設の安全審査について行政庁審査の際の資料も提出するよう国側に求めていましたが、国側は、再処理工場とウラン濃縮工場については行政審査の際の資料が保管されていないと言い続け今なお提出していません。低レベル放射性廃棄物処分場と高レベル放射性廃棄物貯蔵施設についてのみ、省庁再編の引越の際に見つけたといって提出してきました。
 この資料は、高レベル放射性廃棄物貯蔵施設の行政庁審査資料ではありますが、ここで検討している対象が再処理工場であることは、「再処理施設安全審査指針」に言及していることやグラフ中の「特に重要な施設のみ(10建屋)」という記載から明らかです(高レベル放射性廃棄物貯蔵施設にはそんなに建屋はありません)。
 なお、「4.その他の問題点」「a」の「日本原燃産業(株)が使用している衝突速度条件150m/sと整合をとる必要がある」という記載は、、当時は日本原燃産業株式会社がウラン濃縮工場と低レベル放射性廃棄物処分場の、日本原燃サービス株式会社が再処理工場と高レベル放射性廃棄物貯蔵施設の事業主体でした(この2社が合併して現在の日本原燃株式会社になっています)が、既に日本原燃産業のウラン濃縮工場が衝突速度150m/sで安全審査を終了していたので、そのことと整合性をとる必要性があるという意味です。




 

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