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  契約社員等の雇い止め

もくじ:index
 行政指導上の雇い止め制限 GO
 法律上雇い止めに合理的な理由が必要な場合 GO
 更新上限があるときGO
 後から不更新条項を追加されたときどう闘うか GO

 派遣労働者の場合:派遣切りGO
 契約期間中の解雇 GO

Tweet  はてなブックマークに追加 契約社員の雇い止め 庶民の弁護士 伊東良徳

 正社員(いつまでという期限が定められずに雇われているのが通常です)と違い、期限を定めて雇われている労働者を契約社員と呼ぶことが多く(正社員も、当然使用者と「労働契約」をしているわけで、正社員以外が「契約社員」という言葉の使い方は理屈には合いませんが)、近年ではこの契約社員の割合が増えています(使用者がコスト削減のために正社員をリストラで減らし、その仕事を契約社員、パートタイマー、派遣労働者などにさせているということですね)。
 期限を定めて雇われている労働者は、法律家の業界では、「有期雇用」、「有期契約」、「有期雇用労働者」、「有期契約労働者」などといわれますが、この期限が来たときに使用者側が労働契約を更新しないで終了させることを「雇い止め」(行政用語では「雇止め」と「い」を振らないことが多い)と呼んでいます。継続中の労働契約を使用者が一方的に解約する「解雇」とは違い、もともと定めていた期間が満了した(期限が来た)から労働契約は(更新しない限り)当然に終了するという理屈です。
 しかし、労働者は、生活がかかっていますし、多くの場合労働者は期限が来たらやめたいと思っているのではなく働き続けたいと思っているわけです。そこで、期限を定めて雇われた労働者について、期限が来たときに使用者は無条件で(合理的な理由なく)雇い止めをしてよいかが問題となるわけです。

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行政指導上の雇い止め制限(→労働基準監督署の利用を考える)
 雇い止めというと、裁判上、使用者が雇い止めをするときに合理的な理由が必要となる場合(法律業界では「解雇権濫用法理が類推適用される場合」なんて言い方をします)のことが説明されるのが普通です(実際、本気で闘うときはそこが重要です)。しかし、実は、2003年以降は、厚生労働省が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」という告示とそれに伴う通達を出していて、労働基準監督署がその線に沿った行政指導をしています。
 この基準では、1年を超えて継続勤務しているか1年以内でも3回以上更新している有期労働契約を使用者が更新しない場合、労働者に対して30日前までにその予告をする必要があり、不更新の予告後に労働者がその理由の証明書を請求したとき、また不更新後に労働者がその理由の証明書を請求したときは遅滞なく証明書を交付しなければならず、かつその理由は「契約期間の満了とは別の理由を明示することを要する」とされています。
 つまり、1年を超えて継続して勤務している契約社員の場合(更新が3回以上、例えば2か月契約を3回更新して8か月経過時点で使用者が更新しないなどの場合は、1年未満でも)、使用者が雇い止めをするためには、労働者がその理由の証明書を求めれば、単に期限が来たというだけではなくそれ以外の理由を証明書に書かなければならず、使用者が雇い止め理由の証明書を出さなかったり、期間が満了した以外の理由を書いていないときは、労働基準監督署に申告すれば労働基準監督署が指導するということになるわけです。
 もっとも、この通達の中で、期間の満了とは別の理由の例として、「前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため」「契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため」ということも挙げられているので、そういう理由の場合、通常の解雇とは違う、期限に関する理由でもいいということになってしまいます。
 雇い止めの30日前の予告は、解雇予告と似ていますが、雇い止めの場合は予告手当という制度はありません。どちらにしても契約の期限までは雇用が続き、給料が支払われるということです。

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法律上雇い止めに合理的な理由が必要な場合(→裁判・労働審判等を見越して)
 2012年8月10日以降は労働契約法で一定の場合には雇い止めに合理的な理由が必要とされています。労働契約法の規定上の言葉では、使用者が労働契約の更新を「拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で」労働契約が更新されたものとみなされます。労働契約法の規定では、労働者が労働契約の更新の申込をしたり、期間満了後遅滞なく労働契約の締結の申込をした場合とされていますが、改正労働契約法の実施通達ではこの申込は「使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよい」、「労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよい」とされていますので、裁判等になっている場合、特に「申込」は気にしなくてよく、実質的には単純に更新拒絶に合理的な理由が必要と考えておけばいいと思います。
 どのような場合に雇い止めに合理的な理由が必要となるかについて、労働契約法の規定は、非常にわかりにくいまどろっこしい規定になっています。しかし、改正労働契約法の実施通達でも「最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)の内容や適用範囲を変更することなく規定したものである」と明言していますから、実質的には、契約社員の業務内容等が正社員の業務内容と差異がなく、期間が満了しても契約更新手続がすぐになされず、多くの契約社員が継続雇用されているなどの事情から実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態で継続していたとされた東芝柳町事件最高裁判決(最高裁1974年7月22日第一小法廷判決)や業務内容が正社員より簡易で契約更新の手続がきちんと行われており継続雇用される者も一定数にとどまっているので東芝柳町事件のケースとは異なるが、業務内容が季節的・臨時的なものではなく、雇用関係がある程度継続することが期待されており、5回にわたり契約が更新されていることから解雇に関する法理が類推されるとした日立メディコ事件最高裁判決(最高裁1986年12月4日第一小法廷判決)の基準で判断されることになります。
 言い換えれば、業務内容(正社員と同じ場合プラス)、契約更新の回数(多いほどプラス)、通算勤続期間(長いほどプラス)、契約更新手続(きちんと行われているとマイナス、ルーズだとプラス)、雇用継続や長期勤務に関する使用者の言動(採用時や勤務開始後の言動が、労働者に長期勤務や雇用継続を期待させるものである場合プラス)、他の労働者の更新状況(多くの者が更新されていればプラス)などを考慮して、実質的には期間の定めのない契約と異ならないか、あるいは労働者の雇用継続の期待が合理的かということを判断することになります。

 このようなことを考慮して、実質的には期間の定めのない契約と異ならない、あるいは労働者の雇用継続の期待が合理的と判断されれば、雇い止めには合理的な理由が必要となり、あとは解雇の場合と同様の判断になっていきます(ただし、その解雇理由の合理性の程度が正社員とまったく同じといえるかについては問題があり、特に使用者が人員削減の必要性を理由に解雇する整理解雇の場合、正社員より先に契約社員を解雇することを裁判所が容認する傾向がありますので、その点は注意すべきです)。

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更新上限があるとき
 有期労働契約を締結する際に、当初から更新回数の上限(更新は3回までなど)や通算期間の上限(3年とか4年が限度等)が定められる場合があります。
 労働契約法(第18条)が2013年4月1日以降開始の有期労働契約が更新されて(2013年4月1日以降の)通算契約期間が5年を超えたところで労働者に無期転換請求権を認めたことから、使用者側の対抗策としてこういうことが行われることが多くなっています。
 このような場合、もともとそういう内容で合意をしているため、定められた更新限度に達して雇い止めされた場合に、労働者がなお契約更新の合理的期待があるとされる可能性は相当低くなってしまいます。しかし、その場合でも、現実にはそれを超えて更新されているケースも多々あるとか、使用者が契約書にはこう書いておくが実際にはもっと長く努めて欲しいと言っていたなどの事情があるようなときは、闘える余地もありそうです。また、有期契約労働者の更新上限を定めている場合、使用者が正社員登用制度を採用していることもあり、正社員登用の基準やその運用状況によっては、それを足がかりに闘えるかも知れません(正社員登用の可能性が相当あるというから3回上限でも合意したが実際には登用事例がなく合意の前提が間違いだったとか、正社員登用の基準を満たしているのに登用されずおかしいとか)。簡単ではないですが、雇い止めを争いたい労働者は、そういった事情を捉えて闘うということになります。
 他方、更新上限が定められている場合に、その上限に達する前に雇い止めされたとき、例えば更新は3回までとされているが1度目の契約期間満了で雇い止めされたときには、他の労働者の更新状況や更新についての使用者の言動にもよりますが、それらと合わせて労働者には更新上限までの契約更新の合理的期待があったと認められる可能性があります。以前は、契約更新の合理的期待は更新を繰り返した場合でないと認められにくかったのですが、更新上限を定めることが、更新が繰り返されていない労働者についても、その上限までは合理的期待があると認めやすくする要素になってきています(これも、当然に認められるというわけではなく、簡単ではありませんが)。

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後から不更新条項を追加されたときどう闘うか
 最初は不更新条項がなかった(通常は、そうである以上、労働契約書には「更新されることがある」とか「更新されることがありうる」と記載されているはずです)が、その後の更新の際に不更新条項(更新はこれで最後、次は更新しないなど)が入れられてきた場合、労働者としては、この条項をはずしてくれと求めても、それなら今回更新しないと使用者が言うことが予想されます。
 その時点で既に何度も更新してきているのであれば、不更新条項を拒否して使用者が雇い止めしても裁判等で争って雇い止め無効を勝ち取るという選択もあり得ますし、その場合、使用者側が(顧問弁護士に相談して裁判になったら負けるよといわれ)折れることもあり得ます。
 しかし、これまでの更新回数が少なく「雇用継続の期待が合理的」と裁判所に判断されるか不安な場合やそうでなくても事を荒立てたくないということで渋々その契約書にサインすることも考えられます。そういう場合、裁判所は、労働者も同意しているのだからと不更新条項を有効として雇い止めを認める可能性があります。しかし、これまでの裁判例では、使用者側が労働者に十分に説明をしていない(説明会等を開いていない)とか、更新後の態度も必ずしも今回で終了という念押しをしていないとか、また使用者側が不更新条項を入れて人員削減することに合理的な理由がないとかの事情や、労働者側がこれまであまり消化していなかった有給を完全消化しているというような労働者側でもこれで最後と考えていたとという事情や、労働者に不服を言う機会が度々あったのに労働者が不更新条項に不満を言ったり契約の継続を求めたりせずそれどころか会社の要請に基づいて「退職願」も提出したなどの事情がないかなどを考慮して、不更新条項が有効か無効かが判断されています。そういう事情を考慮して、裁判で不更新条項が無効とされることもあり得ます。
 最高裁は、賃金や退職金の減額への同意について、「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である」という、労働者が労働条件を不利益に変更することへの同意の有効性を簡単には認めてはいけないという法理を打ち出しています。この法理は、当初は発生済みの賃金・退職金の放棄等に限定されたものでしたが、最高裁は、近年、将来の残業代請求権の放棄、妊娠中の軽易業務への転換を契機とした降格への同意、賃金・退職金の減額への同意へと対象を広げてきました。現時点では、まだ不更新条項への同意への適用は明言されていませんが、今後は不更新条項へのこの法理の適用が争われると予想できます。
 不更新条項を入れられて不本意にもサインしてしまった場合でも、これまでの裁判例で考慮された上のような事情を検討して諦めずに闘うという道もあります。

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派遣労働者の場合:派遣切り
 特定の派遣先で就労することを前提に、派遣会社と有期労働契約をする、いわゆる登録型派遣の場合、裁判所は、多数回にわたって更新が繰り返された場合でも派遣労働者の契約更新の合理的期待を認めません。その理由は、派遣法が派遣労働者の保護だけではなく常用代替の防止(派遣先の常用労働者の雇用の安定)をも目的としていることから、派遣労働者の特定派遣先での長期安定雇用を図ることは派遣先での常用労働者の雇用が脅かされることにつながり適切ではないというのです。伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件(高松高裁2006年5月18日判決)では、6か月の有期労働契約を27回更新した後の雇い止めについて雇用継続の合理的期待が否定されています。
 派遣法は、制定当初は常用代替防止と派遣労働者の雇用の不安定性を考慮して派遣可能業務を専門的業務に限定し、派遣可能業務が拡大された後も専門性が高い特定の業務以外では派遣可能期間を1年と限定するなどの制限がありましたが、経済界の要請に応じてそれらの制約はほぼ撤廃され、現在ではほとんどの業務について派遣労働が可能とされ、企業側は派遣可能な業務についてはすべて(労働組合の意見聴取手続さえ踏めば)労働者を差し替えて永続的に派遣労働を利用できるようになっています。すでに派遣法の常用代替防止など実質はなくなっていると思うのですが、裁判所は、少なくとも登録型派遣労働者については、契約更新の合理的期待を認めそうにありません。
 最初の派遣先以外の派遣先での労働も予定されている常用型派遣の場合は、契約更新が繰り返されれば、契約更新の合理的期待が認められると考えられますが、その場合でも、労働契約は派遣会社との間のもので、派遣先との労働契約ではありません。派遣切りを受けた場合、その派遣先での労働が継続できるということではなく、派遣会社に他の派遣先への派遣を求めることができる、派遣会社型の派遣先を見つけられなくても賃金は請求できるということです。
 現在の法制と裁判所の姿勢から見て、派遣労働者が派遣切りを受けた場合の闘いは、かなり厳しいものとなります。

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契約期間中の解雇
 有期労働契約の期間満了時の雇い止めは上で説明したような考え方になりますが、期間途中の解雇は、労働契約法は、「やむを得ない事由」を要求しています。これは、期間の定めのない労働者の解雇の場合よりも高度の正当性を要するものですから、期間中の解雇の場合、労働者側にかなりの落ち度がない限り裁判等で十分に闘えるということになります。

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もばいる モバイル新館の該当ページ→雇止め(有期契約労働者・契約社員の雇止め)

  【労働事件の話をお読みいただく上での注意】

 私の労働事件の経験は、大半が東京地裁労働部でのものですので、労働事件の話は特に断っている部分以外も東京地裁労働部での取扱を説明しているものです。他の裁判所では扱いが異なることもありますので、各地の裁判所のことは地元の裁判所や弁護士に問い合わせるなどしてください。また、裁判所の判断や具体的な審理の進め方は、事件によって変わってきますので、東京地裁労働部の場合でも、いつも同じとは限りません。

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