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◆労働事件の話◆
賃金仮払い仮処分
解雇を争い復職を求める場合、通常は、まず賃金仮払いの仮処分を申し立てます。いきなり本裁判(普通の民事裁判)だと収入なしで1年あまり過ごすことになり、生活できないからです。例外的にこれまでの貯金が十分あって生活に困らないというような場合は仮処分はせずに本裁判となりますが。
また、最近では労働審判という3回以内の期日で結論を出す手続がありますので、和解の可能性が相当程度ある場合には、労働審判を申し立てることが多くなっています(労働審判の話を見てください)。労働者側が、絶対現職復帰、金銭解決の余地はないと考えるときは労働審判には向いていないと、裁判所は弁護士会との協議で繰り返し言っていますので、その場合は今でも仮払い仮処分→本訴ということになるでしょう。
裁判費用
仮処分の場合、裁判所に納める費用は、請求額に関係なく印紙は2000円です。予納郵券と合わせても1万円でおつりが来ます。そして賃金仮払い仮処分の場合は、仮処分ですが、保証金を求められることはまずないと考えていいです。費用的には庶民の味方ですね。(弁護士費用は必要ですが。解雇されている場合、よほど多額の貯金でもない限り、弁護士費用については司法支援センターの法律扶助を利用して立て替えてもらうことが可能です)
審理の進め方とペース
東京地裁の場合、労働専門部(民事第11部、第19部、第36部)に申立をします。
申立後1週間から2週間くらいで第1回の審尋が入ります。使用者側の用意がよければ、第1回までに弁護士をつけて答弁書を出して解雇理由の主張と就業規則くらいは出してきます。その場合は、第2回は労働者側の反論となります。しかし、実際には、特に中小・零細企業の場合、用意が悪いというか引き延ばしを図るというか、初回はほとんどまともに答えてこない場合がままあります。その場合は、第2回以降に使用者側の主張待ちとなります。初回の段階で裁判所から和解の可能性を聞かれることも多いです。金銭解決を考えているのなら、条件次第と答えますが、現実には最初からすぐ和解の話が進行することはそんなにはありません。
第2回以降の審尋は、おおむね2週間に1度程度の間隔で入ります。お互いに相手の主張に反論しながらあわせて証拠書類を出していきます。仮処分では当事者尋問や証人尋問は、普通、しませんので、多くの場合、証拠としては陳述書を作ることになります。
何回か審尋をして大方主張がそろうと、裁判所から、和解のすすめがあることが多いです。この段階ではある程度先が見えていますから、金銭解決を考えるのなら、普通話し合いにはのります。労働者の勝ち筋の事件で、給料の6ヵ月分くらいの提案をされることが比較的多いように思います(1年分くらいの提案の時もありますけど)。
和解で解決できそうもないと、裁判所はおおむね申立から3ヵ月あたりのところで決定を出します。
仮払いの必要性
東京地裁は、保全の必要性について、やや厳しめに判断しているように私には思えます。
解雇から申立までに何ヶ月かたっていると、その間どうして申立をしなかったのかということをかなり聞かれます。何ヶ月も申立をせずに済んだのだから仮払いをしなくても生活できるのではないかと考えられてしまいます。
仮払いを認める場合でも、従来の給料全額ではなく、実際の生活費を領収書や陳述書で出させて、その範囲の額に限定されています。
仮払いの期間もたいてい1年間です。本裁判がその間に終わらなかった場合は、再度、期間を延長するために申立をすることになります。かつては、労働事件は普通の民事裁判より時間がかかりましたので、1年で本裁判が終わるわけないだろうと、私たち労働側の弁護士は文句を言っていました。しかし、最近は、仮処分が認められた場合、本裁判も、数ヶ月で同じ結論で判決ということが増えていますので1年でも十分になってきました。
地位保全の仮処分
なお、賃金仮払いの仮処分の他に、地位保全の仮処分という仮処分もあります。これは、復職を仮に認めるというものです。昔は地位保全の仮処分が認められることがありましたが、今では裁判所は(少なくとも東京地裁は)地位保全の仮処分については保全の必要性がないとして、まず認めません。私たち労働側の弁護士は、主張として、賃金仮払い仮処分とともに地位保全の仮処分も申し立てますが、解雇が違法な場合でも、賃金仮払いの仮処分のみ認められて地位保全は認めないというパターンになります。
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