庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆ハリー・ポッターの謎
  ホグワーツはどこにある?  

 ホグワーツは「どこにもない場所」にあるのじゃ。
 映画のロケではホグワーツ城の外観はアニック城( Alnwick Castle :イングランド北部)やオックスフォード大学( Christ Church College :オックスフォード、イングランド南部)を使用したとかホグズミード駅はゴースランド駅( Goathland Station :ノース・ヨークシャー)を使用したとかの情報はあるけどそれは映画の話。原作で確認しよう。
 ホグワーツの場所を特定するのに現実に使える情報はその日没時間。
 「アズカバンの囚人」を読んだ時、多くの読者がとまどうのは、真夜中(midnight=午前0時)5分前(午後11時55分)から3時間戻った時(アズカバンの囚人515頁、517頁)がなお日没前というくだり。日本の読者には信じられない。映画では戻る時間を「4時間半」に変えていたくらい(原作尊重を強く求めるローリングをどう説得したかは興味深い)。
 しかし、これはスコットランド( Scotland )では当然のこと。「アズカバンの囚人」で時間を戻す日は6月6日(アズカバンの囚人524頁)。スコットランドの中心都市のエディンバラ( Edinburgh )で6月6日の日没時間は午後9時54分ころ(イギリスでは3月の最終日曜日から10月の最終日曜日未明までサマータイムで1時間時計を進めていることに注意)。これだけならホグワーツはスコットランドの中心あたりにあってもおかしくない。
Scotland Map しかし、「炎のゴブレット」では5月の最終週のある夜、午後9時には校庭は暗かった(炎のゴブレット下296頁)。つまり午後9時前に日は沈んでいた。より正確に言うと、午後9時にクィディッチ競技場に着くように午後8時半にグリフィンドール塔を出てクィディッチ競技場に行く途中、静山社版では「暗い芝生」(原作UK版では"dark lawn":598頁)をクィディッチ競技場へと歩いた(炎のゴブレット下296頁)。UK版では、静山社版で「石段を下りながら・・・外は曇り空だった。」(炎のゴブレット下296頁)と訳されているところは "down the stone steps , out into the cloudy night ."(UK版598頁)とされている。いうまでもなくnightが日没前を指すことはない。いずれにしても、この日は午後9時以前に日が沈んでいることが明らか。
 さて、5月の最終週に午後9時前に日が沈むという条件を満たす場所はスコットランドにはない。夏の時期(春分から秋分まで)のスコットランド(イギリス全体でも同じ)では南に行くほど日没が早い。地球の自転の関係で季節に関係なく東へ行くほど日没が早い。従って5月の最終週にスコットランドで一番日没が早いのはチェビオット丘陵( Cheviot Hills )沿いのイングランド( England )との境界地域。そこでも5月25日(最終週としてあり得る一番前の日、従って最終週で一番日没が早い日)の日没は午後9時31分ころ。この日に日没が9時になるためはなんとロンドン( London )まで南に行かなければならない。
 ではホグワーツはイングランドかというとそうも行かない。ローリングがスコットランドだと公言していることを別にしても、「アズカバンの囚人」での6月6日の日没は、真夜中5分前から3時間戻った午後8時55分の後ハグリットの小屋まで行ってその20分後に小屋を出て(アズカバンの囚人449頁)さらにその後。城からハグリットの小屋まで歩く時間を無視しても午後9時15分以降でなければならない。ところが5月25日に日没が午後9時以前になる地域の6月6日の日没は午後9時13分以前になる。
 従って、この2つの条件を満たす場所はない。
 だから、ホグワーツは「どこにもない場所」にあるのじゃ。それが魔法の話にはふさわしい。
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