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女の子が楽しく読める読書ガイド
ライアルと5つの魔法の歌 (原題 : Song Quest)
キャサリン・ロバーツ作 1999年
 歌使いの住むこだまの島の宮殿エコリウム、人魚のような半人マーリーの住む海、港町の銀の街、半鳥半人のケツァルの住む森、戦士の支配する山岳地帯カーチからなる世界「銀色海岸」でのアドベンチャー・ファンタジー。出てくる魔法は、基本的には、歌によって人の感情をコントロールし、場合によっては死に至らせること、話が真実かどうかを見分けること、遠くの声を聞くこと。
 基本的なストーリーは、概ね次のようなものです。歌使いになるための訓練生の少女ライアルは、カーチ人によるマーリー狩りをやめさせるための使節の一員として、銀の街、山岳地帯を旅して行きますが、カーチ人を支配する黒幕の大僧正に捕らえられます。大僧正は、捕らえたライアルとケツァルの力を悪用してエコリウムを滅ぼそうとこだまの島に攻め上ります。そこで、カーチ人のマーリー狩り船に密航してカーチ側に付いていたライアルのライバルの訓練生の少年ケロンに助けられながら、ライアルは大僧正と闘い、多くの犠牲を払いつつも勝利します。
 魔法が歌でおこなわれること、宮殿、海、港町、山岳地帯という場面展開、美しいマーリー、ケツァルといった半人たち、歌使いの青く豊かな髪と魔法の石ブルーストーン。読んでいて、設定がすごく映像向きで、映画化しやすそうな作品だと感じました。ハウルの動く城よりは、この作品の方が宮崎アニメ向きだと思います。
 でも、このキャサリン・ロバーツの作品って、アースヘイブン物語もそうなんですが、これだけ舞台となる世界を構築して、1作だけのために使ってるの、ぜいたくですね。ここまで作ったらシリーズ化したくなるのが普通だと思うんですが(と思ったら、日本語訳が出てないだけで、「エコリウムシリーズ」として2巻The Crystal Mask が2002年7月、3巻Dark Quetzal が2003年3月に発売されていました。日本語版の刊行は2006年4月2日現在未定)。
 主人公は、訓練生の少女ライアル。ライアルは訓練生の中で優等生で、半人の声を聞く能力に恵まれていますが、たくましさや勇敢さは強調されていない、普通の少女とされています。友達の訓練生の少年フレンが力持ちで、力仕事やいじめっ子の排除はフレンの仕事になります。冒険に参加する訓練生はライアルとフレン、そしてライアルをライバル視する少年ケロンの3人。ケロンの役回りがストーリーに深みを持たせていますが、登場人物の構成としては、主人公の少女と力持ちの少年とライバルの少年。力仕事が力持ちの少年にお任せになるのはオズの魔法使いパターンですし、少女の友人も冒険では出てきません。
 女の子が読んでというのと少し違いますが、半人やカーチ人が死ぬ場面が多いのと、最初の方で訓練生が厳然と歌使い(候補)と従者、助産婦に分けられ(従者、助産婦に対しては職業差別的な表現も見られます)扱いが変わるあたり、「楽しく」ない感じです。
 少女が主人公の冒険物語という点で、紹介しますけど、もうひと工夫あるとよかったのにねってところです。

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