庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

女の子が楽しく読める読書ガイド
モリー・ムーン
ここがポイント
 催眠術の能力で冒険する少女と、働く様々な女性たちを描く1巻は魅力的
 2巻では冒険のレベルを上げ、読み物としてわかりやすくなったが…
 3巻以降は日本では未刊で版元では刊行する気がないよう。

 お薦め度:1巻は星イメージ星イメージ星イメージお薦め/

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ジョージア・ビング作
1巻 モリー・ムーンの世界でいちばん不思議な物語  2002年
   (原題:MOLLY MOON'S INCREDIBLE BOOK OF HYPNOTISM)
2巻 モリー・ムーンが時間を止める  2003年
   (原題:MOLLY MOON STOPS THE WORLD)
3巻 MOLLY MOON'S HYPNOTIC TIME TRAVEL ADVENTURE は2005年8月に原書発売、日本語訳は未刊(2008年6月1日現在まだ未定。早川書房に問い合わせたら2008年5月30日付で「3巻目以降の刊行予定は今のところございません。」というメールが返ってきました。はたして日本語版は出るのでしょうか?)。そうこうしているうちに・・・↓
4巻 MOLLY MOON , MICKY MINUS AND THE MIND MACHINE は2007年10月5日原書発売
5巻 MOLLY MOON & THE MORPHING MYSTERY は2010年5月4日原書発売
6巻 MOLLY MOON & THE MONSTER MUSIC は2012年8月1日原書発売
公式サイト(英語版)はこちらにあったのですがいつの間にかリンク切れになり所在不明、日本のサイトはこちら(あまり更新されてないけど:最終更新が2005年12月15日って・・・)
 ムーン・マシュマロ(お菓子)の段ボール箱に入れられて孤児院の前に捨てられていたモリー・ムーンが10歳(11歳かも)まで孤児院でいじめられ続けて育ってきた後、催眠術の本と出会って才能が花開き、催眠術を駆使しながら冒険をするお話。
 捨てられて10年間いじめられて育った子どもが新たな世界を知り特殊な力を身につけて・・・どこかで聞いたよね。
 目でひとにらみして相手をやっつける、いつでも犬といっしょの少女・・・どこかで聞いたよね。
 ということで、アイディアはハリー・ポッターとペギー・スーを混ぜたような感じですが、ストーリーに入り込むと結構独自の世界を構築しています。
 モリーは、最初はいじめられてすねた少女として描かれていますが、催眠術の才能があることがわかり、催眠術を習得して(ひとにらみで相手を催眠術にかけ自由に操れるようになって)自信をつけます。1巻の前半では催眠術を使ってタレント・コンテストに優勝したり、ブロードウェイのスターになったりとやりたい放題でしたが、事件に巻き込まれて反省し、催眠術をよいことにだけ使おうと考えるようになっていきます。2巻になると、両親がわかっても、「モリーはほんとうに母親がほしいのかどうかわからなくなった。自分の母親がだれなのかを知ることとじっさいに母親をもつこととはちがう。これからは母親の指図にしたがうことになるのか?そうだとしたら気が重い。自分のことは自分できめることに慣れているからだ。」「でもいちばんいやなのは、催眠術などつかわなくても自分が別人にされてしまいそうなことだった。新しい両親が望むとおりのこどもになろうという気は毛頭ない。いつまでも自分自身、モリー・ムーンでいたいのだ。」(モリー・ムーンが時間を止める420頁)と強い自立志向を見せています。すばらしいですね。11歳の思考としてはちょっと行き過ぎにも思えますけど。
 このお話ではロッキーという友達の男の子と協力して冒険が進みますが、このロッキーはマッチョな感じはありません。あとノックマンという元悪者はマッチョな感じの男性ですが、催眠術でモリーの言いなりだし。実質的に見てもあくまでもモリー・ムーンが主役ですし、冒険の中心は圧倒的にモリーです。
 今のところ2巻までしか日本語版は出ていませんが、1巻と2巻は、私には、ずいぶん肌合いが違うように思えます。
 1巻では、催眠術でやりたい放題したモリー・ムーンも反省して催眠術はよいことにしか使わないと決意します。モリーがやっつけた悪者も、実は可哀想な子ども時代を過ごしていたということになり、モリーはその悪者をよい人に立ち直らせようと孤児院へ連れて帰って立ち直らせます。児童虐待問題を考えさせる内容にもなっていて、うーん、実に教育的な内容の本になっています。その分、ファンタジーとしての面白さはちょっと中途半端。それから、女の子に読ませるという観点でのプラス点として、このお話で地位のある人物の多くが女性なんです。孤児院の院長、ブロードウェイミュージカルのプロデューサー兼監督、銀行の支店長。こういうところにさりげなく女性を配置しているファンタジーって珍しいですよ。
 これが2巻では、そういうところがほとんどなくなって、モリーは時間を止める能力も身につけて悪者(やはり催眠術と時間を止める能力がある)と闘ってやっつけます。こちらではあまり性善説的なお話でもなくなっていますし、社会的地位の高い女性も登場していません。ファンタジーとしての面白さでは2巻の方が切れがよくなっていますけど。
 3巻はタイトルからすると時間を止めるだけじゃなくて遡れるようにもなりそうで、2巻の路線をさらに進めるんでしょうね・・・
 ファンタジーとしてみると、2巻の方が面白いけど、女の子が楽しく読めるという観点では1巻の方がお薦めですね。

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