たぶん週1エッセイ◆
映画「東京家族」
 山田洋次監督50周年記念作品「東京家族」を見てきました。
 封切り12週目日曜日、キネカ大森シアター3(40席)10時50分の上映はほぼ満席。

 瀬戸内海の島で暮らす元教師の平山周吉(橋爪功)・とみこ(吉行和子)夫婦は、子どもたちが住む東京にやってきたが、医師の長男幸一(西村雅彦)は忙しく日曜日にベイエリアをドライブする予定だったが患者の容態が悪化してキャンセルになり、とみこは孫の小学生勇(丸山歩夢)と散歩に出るが勇が将来について既に諦めている様子に驚く。美容院を経営する長女滋子(中嶋朋子)も店から手が離せず2人が泊まっていても東京案内もできず、夫(林家正蔵)がお義母さんは感じがいい人だけどお義父さんは苦手だなぁといいながら近くの温泉に連れて行った。滋子から両親を東京見物に連れて行けと言われた舞台の大道具担当の次男昌次(妻夫木聡)ははとバスに乗せて自分は居眠りをしていたが、うなぎ屋で周吉から現在の仕事の将来見通しを問い質され反発する。滋子は幸一と相談して両親を横浜のホテルに泊まらせるが、ホテル暮らしに慣れない2人は1泊で予定を切り上げて帰ってきてしまい、滋子から今夜は町内会の宴会がうちであるのでいてもらっては困るといわれて泊まるところがなくなり…というお話。

 離れて住む両親が久しぶりに子どもたちを訪れても、それぞれの家族の住宅事情、仕事の都合などで十分に世話をしたり相手をすることもままならず、思惑がすれ違い、ストレスがたまり、しかし相手の事情もあるからと理解しがまんしようという姿を描き、家族とは何だろうというようなことを問いかける作品です。
 東京の子どもたちの悪意はないけれどもめんどうに思う疎遠な様子と、終盤で周吉の隣に住む中学生ユキ(荒川チカ)のあっけらかんとした純真な親切さが、村社会の人間関係の素朴な温かさと、「遠くの親類より近くの他人」を描いていて、故郷と少し前の時代の人間関係へのノスタルジーが感じられます。
 お母さんは感じがいい人だけど、お父さんは感じが悪いという評価が繰り返し登場し、年老いて引退した男は行き場がなく、産業廃棄物だよなぁと、つくづく感じます。周吉、昌次が席を外したすきにこっそり自分のウナギを半分昌次の重箱に移したりして(ごんぎつねか?)不器用に思いやってはいるんですが、評価されないんですね、これが。
 そういった人情の機微を手堅くそつなく描いていますが、内容的にはテレビのホームドラマだよねと思い、映画館で見るべき作品かということには、ちょっとどうかなと、私は思ってしまいます。

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