庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「マイ・インターン」
ここがポイント
 基本的には高年齢の男性の観客に「自分もまだまだやれそうな」希望を持たせる作品
 女性観客がアン・ハサウェイの成長物語として素直に見られるか、男がリードしなくちゃという感覚に鼻白むか

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 引退し妻に先立たれた70歳元ビジネスマンが若者企業で存在感を示すハートフルコメディ映画「マイ・インターン」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、新宿ピカデリーシアター1(580席)午前9時55分の上映は7割程度の入り。

 電話帳印刷会社の営業部長を引退し、3年前に妻に先立たれ、海外旅行やヨガ、太極拳などさまざまな趣味に明け暮れ、近隣の女性からもモーションをかけられるが、満足感を得られず、やはり仕事をしたいと考えていたベン(ロバート・デ・ニーロ)は、ファッションのネット通販企業 About the Fit (ATF) が公益活動として行ったシニア・インターン募集に応募した。創業者で、25人でスタートした企業を1年半で従業員216人を擁するまでに成長させた社長ジュールズ(アン・ハサウェイ)は、シニア・インターン募集を実施した幹部のキャメロン(アンドリュー・ラネルズ)から、ベンをジュールズ付きに配属すると聞かされて、驚き、結局ベンには仕事を与えなかった。ベンは周囲の若い社員からアドバイスを求められるようになり、溶け込んでいくが、ある日、ジュールズの運転手がアルコールを飲んでいるのを見て運転を辞退させた際に運転手を務めることになったのを機会に、ジュールズと接するようになり…というお話。

 基本的には、70歳で妻に先立たれて退屈していた高齢者男性が、若者主体の企業に再就職して、文化の違いに戸惑いながらも次第に周囲に溶け込み重宝されるようになり、新たに恋人も見つけという具合に、高年齢の男性の観客に「自分もまだまだやれそうな」希望を持たせる作品と言えるでしょう。70歳で、仕事も現役、若者ともうまくつきあって存在感を示し、性生活の方も現役って、希望というより幻想/妄想かも、とも思うのですが…
 ベンは、そこそこの企業の幹部として勤め上げて立派な家もあり生活には不安がないという設定で、高齢者の多くが自分を投影できるかは、やや疑問に思えますが。まぁ、そこは映画だから、夢を持たせないとということでしょう。

 公式サイトのキャッチコピーは、「すべての女性を応援する、感動のデトックスムービー あの『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイが、ニューヨークのファッションサイトの社長に!」とされていて、興行サイドは、アン・ハサウェイファンのアラサー女性をターゲットと考えているようです。
 アン・ハサウェイはスーパーキャリアウーマンの何でも自分でやる社長という役柄ですが、私生活では専業主夫となった夫マット(アンダース・ホーム)の浮気に悩み泣き崩れたり、娘ペイジ(ジョジョ・カシュナー)の幼稚園行事にも出られないことに後ろめたさを持ち、母親とはギクシャクし、仕事も自分で抱えすぎて次第に対応しきれなくなってキャメロンからは他の人をCEOに迎えるよう求められ、会社のトラブル収拾よりも母親に誤って送ってしまったメールの回収を優先するよう指示したり、簡単に酔いつぶれたりと、感情的でひ弱でわがままな部分の描写が目に付きます。それを年上男性であるベンのアドバイスで解決し乗り切っていくという展開には、どこか、やっぱり男がリードしてあげないとねという女性を一段低く見る意識が顔を覗かせているように感じました。スーパーキャリアウーマンでは取っつきにくいジュールズに、弱さや欠点を見せることで、観客の女性に親近感を感じさせ、その成長物語と位置づけるというのが、制作サイドの狙いなのでしょうけれど、素直にそう見てよいものか…
(2015.10.18記)

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