たぶん週1エッセイ◆
東京電力はどこまで嘘つきなのか3/社長もでたらめ答弁

Tweet  はてなブックマークに追加 東京電力はどこまで噓つきなのか 社長もでたらめ答弁

 2013年2月12日午前、東京電力の広瀬直己社長が、東京電力はどこまで嘘つきなのか/国会事故調調査妨害事件の件で、衆議院予算委員会に参考人として招致されました。民主党の辻元清美議員の質問(証人喚問を要求し、この日の参考人招致を導いたのは共産党ですが、質問したのは辻元議員だけでした。国会ってよくわかりませんね)に対し、広瀬社長は、最初は現在調査中であるといいながら、「間違った説明」は玉井企画部部長が調査もせずに思い込んで行ったもので上司にはまったく相談していないと、すべてを玉井企画部部長個人に押しつける答弁をしました。
 率直に言って、私は、現段階では広瀬社長は現在調査中の一点張りで逃げるだろうと思っていて、この時点で部下にすべての責任を押しつける発言をするとは予想していませんでした。東京電力という会社は、予想以上に上から下まで劣化しているのだとわかりました。

 さて、玉井企画部部長の経歴ですが、広瀬社長の答弁によれば、1989年の入社で大学では電気を専攻、社内では計装(温度・圧力をチェックする機械のメンテナンス)が専門で、原子力の専門家として国会事故調の窓口に当たらせていたとのことです。玉井企画部部長は、福島原発でも現地で勤務したことがあり、企画部部長の前職は柏崎刈羽原子力発電所技術総括部長でした。国会事故調との窓口としては、国会事故調の質問や資料請求に対して社内の専門家に聞いて国会事故調に対して回答するなどの対応をすることが業務でした。

 私が東京電力はどこまで嘘つきなのか2/嘘の上塗りで大きな疑問としていた、玉井企画部部長はどうして「今は真っ暗」と判断したかについて、広瀬社長から答えが聞けました。驚いたことに、広瀬社長の答弁によれば、玉井企画部部長は原子炉建屋は暗いものだと決めつけて建屋カバーや照明について調査もせずに「思い込みで」説明したそうです。広瀬社長の答弁を再現すると、「本人は、あ、そもそも原子力の建屋、建物、ま、これは全体のイメージだと話しておりますけれども、暗いもんだという、まったく決めつけております。従って、えー、最初から原子力の建屋の中は暗いもんだという思い込みの下、説明をしてるということでございます。さらにですね、えー、10月14日に、えー、建屋カバーが完成して、あの、先生の後ろにありますように28日に照明ができたということを事前に調査せずに、えー、思い込みのまま説明をしたというふうに申しております。」「本人は、あー、国会事故調の事務局から説明をというふうに求められて以降、もっぱら、あー、もちろん、暗さは当初から思い込みがございましたせい、せいもあると思いますけれども、放射線のレベルであるとか、それからどのくらいその、中ががれきでどうなってるのかといったようなことを、第一原子力発電所の者に確認をしております。で、本人は第一原子力発電所には、事故以降入っておりませんので、すべては聴取したということでございます。それから、その段階で、先ほども、繰り返しになりますが、14日にカバーが完成していたこと、あるいは照明がついていたということの確認をしていなかったということ、これについてはま、まことに申し訳ないことだと思っております。」となります。
 こう言えば逃げ切れると思ってるんでしょうか。ちょっと神経を疑います。広瀬答弁のおかしさを、順番に、簡単に検討してみましょう。
 原子炉建屋は暗いもの。設計上は、コンクリートの建屋ですし窓もありませんから、電源がなくなれば暗いでしょう。机上の論理ではそうですね。だから、そういうストーリーが今回立てられたんでしょう。でも、この建屋、ふだんと違って、事故で爆発して吹き飛んでるんですね。東京電力の本社の方はそういうこともう念頭になくなってるんでしょうか。1号機の原子炉建屋のことを考えるときに、爆発で建屋が吹き飛んでいることを忘れられる人がいるのはビックリです。そして、そのレベルじゃなくて、玉井企画部部長は、私たちに2011年10月18日に1号機原子炉建屋4階を東京電力が調査したときのビデオを見せてるんですよ。そのビデオでは、その「玉井企画部部長が暗いものと決めつけている」原子炉建屋に日が差して明るいんです。みなさんもテレビで見たかと思いますけど。私たちに説明するために、事前にそのビデオを見た玉井企画部部長は、もしも広瀬社長が国会で堂々と(いけしゃあしゃあとというべきでしょうね)述べたように、原子炉建屋は暗いものと決めつけていたなら、そこであれっと思ったはずですね。ですからどんなに遅くとも、そこで思い直すか調べるはずですね。国会事故調を最初から意図的に騙そうとしていたのでなければ。それに、原子炉建屋は暗いものという思い込みならば、原子炉建屋というものがもともとそういうものだということのはずで、「今は建屋カバーがついているので」という説明になるはずがないですね。
 建屋カバーや照明について調査もせず。どうしても玉井企画部部長を軽率なうっかり者にしたいようですね。先ほども言いましたように、国会事故調発足以来、国会事故調からの質問や資料請求に対して社内の専門家に問い合わせをして国会事故調に回答するのが玉井企画部部長の主な業務であり、日常業務だったんですよ。それが、このときは、建屋カバーについても照明についてもまったく調査しないで、国会事故調に説明したと広瀬社長は国会で堂々と述べたんです。この玉井企画部部長の発言は、実質的な説明に入る冒頭に自分から積極的に「今は、建屋カバーがかかっていて、えー、照明がついておりませんので、えーと、原子炉建屋、電源復旧していませんから、建屋としてはですね、あのー、真っ暗だということをご了解いただきたいと思います」と述べたものです。国会事故調に対して、自分から「建屋カバーがついたから真っ暗」、「照明がついていない」と積極的に説明するのに、建屋カバーのことも照明のことも一切調べなかったって、およそ考えられません。しかも、社内の専門家に問い合わせをすることを日常業務としていた人が、ですよ。私が、玉井企画部部長は福島第一の方からも話を聞いてきていると話したことを東京電力はどこまで嘘つきなのか2/嘘の上塗りで明記したことへの釈明からか、広瀬社長の答弁では、玉井企画部部長は放射線レベルのこととがれきのことは福島第一の現場に問い合わせたが、建屋カバーや照明のことは全然問い合わせなかったとか。建屋カバーや照明のことを国会事故調に積極的に一番に言おうとしている人物が、現地に他のことはあれこれ問い合わせながら、一番最初に言おうとしている建屋カバーと照明のことは問い合わせない・・・。こういう言い訳を信じる人がいるんでしょうかね、東京電力広報部には。

 さらに、玉井企画部部長は、上司にはまったく相談していないとのこと。広瀬社長の答弁を再現すると、「あるい・・・さらに、えー、関与、その他の上司の関与というご質問でございますけれども、本人は、もう、28日に出向いたときに、えー、その3月の実際、5日、6日に、えー、現地を調査していただくことになっとったわけですが、そこの、いわゆる段取りといいますか、ロジであるとか、それから必要な、あー、準備であるとか、そうしたものについての説明をするものだという、そういう業務だという認識の下、上司にはまったく相談をせずに、えー、本人がそこで調査したものを説明しに向かっております。」となります。
 広瀬社長の答弁では、2月28日の説明が3月5日、6日の調査の段取りの説明とされていますが、東京電力はどこまで嘘つきなのか2/嘘の上塗りで説明したように、当時何を調査対象とするかが交渉中であり、玉井企画部部長は最初にこの日の説明の位置づけについて1号機原子炉建屋の調査がいかに大変かを説明しに来たと述べています。広瀬社長の答弁は、2月28日の説明について、その前提、目的をごまかしていると、私は思います。
 その点は置くとして、国会事故調の現地調査への対応について、窓口の一存で決められるような会社なんですか、東京電力は。この答弁のストーリーを組み立てた方はお忘れかもしれませんが、玉井企画部部長は、国会事故調の調査に東京電力は同行しないと言い切ったんですよ。無駄な被ばくをさせられないって。国会事故調に対してできる限り協力するということは事故調発足当時の西澤社長の約束で、玉井企画部部長はことあるごとに、社長が約束したことですからできる限り協力しますと言っていました。その約束に反しかねない決断を、また福島原発現地の対応にも直結する決断を、窓口の企画部部長が一存でできるんでしょうか。

 私にとっては、驚きと失笑の連続の見世物でしたが、こういうおよそあり得ないでたらめな答弁を国会で行ったということは、東京電力にとって大きな汚点として残り続けるものと思います。
 どうすれば逃げられるかだけを机上のつじつま合わせで考えて、こういう無責任で不自然なストーリーを社長に吹き込んだ連中の愚かさを見るにつけ、そしてこんな不自然なストーリーを聞かされてそのままに国会で答弁する社長の理解能力と神経を見るにつけ、東京電力という会社が上から下まで劣化していることを痛感せざるを得ません。 

(2013年2月12日記、同日夜衆議院TVのアーカイブで広瀬答弁を聞き直して更新)

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