たぶん週1エッセイ◆
映画「蘇る玉虫厨子」

 法隆寺所蔵の国宝「玉虫厨子」を現代の匠の技で再現しようというプロジェクトのドキュメンタリー映画「蘇る玉虫厨子」を見てきました。
 東京での上映の終了間際に滑り込みました。

 玉虫厨子は、教科書の写真で見ても、現物を見ても、黒ずんでいて、どこに玉虫の羽が貼ってあるのかわからなかったのですが、透かし彫りの金物で留めてあって金物の透かし彫り部分(穴)から玉虫の羽が見えるという構造だったのですね。どちらにしても今は玉虫の羽はほとんど残っていない状態なので、気をつけてみてもほとんどわかりませんが。
 厨子の側面に描かれた絵も、褪色していてほとんどわかりませんが、天女が舞っていたりする絵なんですね。

 そういう玉虫厨子についての勉強になるという面もありますが、どちらかというと、古代の匠の技の再現というか、それよりいいものを作ってやろうという、現代の職人の技と心意気の物語の方が、映画としては見どころかなと思います。
 プロジェクトでは、本物の再現版とともに、本物の枠に囚われずに現代の技術で最高の玉虫厨子「平成版」と2つ作るということになっています。装飾画は、再現版は塗りで玉虫の羽は使っていませんが、平成版の方は玉虫の羽を2ミリ角に切って色分けし玉虫の羽を並べて貼り付けて絵にするという気の遠くなるような作業で作っています。こちらの方が、私たちが玉虫厨子の説明を聞いてイメージするものに近いですね。平成版の装飾画のできあがり画像は、キラキラしてはいますが色合いに深みがあり、とてもすばらしい。
 それでも屋根を担当した職人ができあがりを見て、自分は完全に左右対称にきっちり作ったが、本物は左右が完全に対称ではない、しかし本物の方が遊びがあり味わいがあるというようなことを語っているのが印象的でした。

 このプロジェクトは、個人が私財を提供して計画したもので、国は全く関与していないそうです。それで、担当した職人も、一般公開日に見に行ったりビデオで撮るだけで、玉虫厨子に触らせてももらえなかったようです。それで細部まで再現してしまうのもすごいですが、いかにもお役所的な話だなとも思います。
 内容としては、テレビのドキュメンタリー番組のような感じで、映画で見る必要があるのかとも思いますが、再現した玉虫厨子の玉虫の羽部分の画像を大スクリーンで見られたのはよかったなと思います。

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