たぶん週1エッセイ◆
映画「パブリック・エネミーズ」

 1930年代の伝説の銀行強盗ジョン・デリンジャーを描いた映画「パブリック・エネミーズ」を見てきました。
 封切り3週目土曜日午前中は半分くらいの入りでした。

 1930年代前半のアメリカで、銀行強盗を繰り返し、刑務所に入れられても脱獄してまた銀行強盗を繰り返し、当局から“Public Enemy(社会の敵) No.1”と名指しされたジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)が、酒場で見かけたフランス人と「インディアン」(今どきこういう言い方しませんけど)のハーフのクローク受付係ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に一目惚れして強引に口説き落とし、威信を賭けてデリンジャーを追いつめるメルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)らFBIの包囲網を突破して、ビリーの元を訪れ、銀行強盗を続けるが、次第に時代は移って協力者は減り、仲間も殺されて・・・というお話。

 銀行の金は奪うが個人客の金は奪わない、仲間を決して見捨てないという、昔気質の美学を貫くジョン・デリンジャーが、次第により効率的な半合法経済活動に軸足を移したシンジケート(組織)から協力を受けられなくなり、さらにはデリンジャーのための法規制の強化を迷惑視され、FBIの人海戦術と盗聴などの「近代的」捜査と冷酷非情な(かなり違法な)拷問等による情報取得によって追いつめられていく様は、古き良き時代の職人気質や美学へのノスタルジーを感じさせます。
 FBIの中でも、やや昔気質というか良識の残るパーヴィスと他の捜査官の確執は描かれていますが、全体としてはFBIの捜査はかなり酷い。撃たれて瀕死のギャングに治療しようとする医師を押しのけ首を絞めながら治療して欲しければしゃべれとデリンジャーの居場所を吐かせたり、ビリーを手錠で椅子に拘束しトイレにも行かせず失禁するのを嘲笑い殴りつけてデリンジャーの隠れ家を吐かせたり、隠れ家を提供している仲間の女性に協力しなければ48時間以内に国外退去させると脅しつけて手引きをさせたり、もうどう見ても、映画的にはこっちの方が社会の敵。逮捕すべき相手を平気で後ろから射殺するとか、美学のかけらもなし。
 映画的にはジョン・デリンジャー側で見るしかない作品ですが、ノスタルジーと寂しさしか感じられないのが、見終わってちょっともの悲しいところです。

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