たぶん週1エッセイ◆
映画「湖のほとりで」

 イタリアの田舎町で起こった殺人事件を捜査する刑事の目を通して人間関係を描いた映画「湖のほとりで」を見てきました。
 イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞史上最高の10部門受賞映画でありながら、全国で2館、東京では銀座テアトルシネマ単館上映ですから、封切り2週目土曜日午前中も、当然のように満席。初めて前の晩に指定席買いに行きました。

 田舎町の湖の畔で、若い女性アンナ(アレッシア・ピオヴァン)の全裸死体が発見され、サンツィオ刑事(トニ・セルヴィッロ)は捜査を始める。第一発見者の湖畔近くに住む青年マリオと頑固なその父(オメロ・アントヌッティ)、アンナを偏愛する父(マルコ・バリアーニ)、アンナの恋人、最後にアンナと話す姿が目撃されたかつてアンナがベビー・シッターをしていた子どもの父(ファブリツィオ・ジフーニ)・・・アンナに争った跡がないことから顔見知りの犯行と見た警察の捜査線上に次々と容疑者が浮かんで行き・・・というお話。

 ミステリーとしてみると、謎解きがきちんと行われる印象ではないですし、スピード感がなく、ちょっと辛い。アメリカ映画を見慣れた感覚では、ストーリーもカット割りもテンポが遅すぎる感じです。
 見どころは、サンツィオ刑事の視点から見た人間味・人間ドラマに尽きるでしょう。ゆったりとした画面展開でにじませるサンツィオ刑事の思い。これがじんわりと効いてくると感じられるかどうかで評価が決まるように思えます。
 サンツィオ刑事自身、認知症が悪化して夫のことも忘れていく妻とぎくしゃくした娘との関係を抱えています。気配りの人ではないけど、妻や娘を愛おしむ視線の優しさに、ちょっときゅんとします。
 誤認逮捕した容疑者に、あんなに素直に謝れる刑事がどれくらいいるでしょうか。そのあたりにも、人間味を感じました。

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