たぶん週1エッセイ◆
映画「孤島の王」
ここがポイント
 最後は負けるとわかっていても、汚い権力を許せず、とにかく闘いたいという心情に共感する

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 1915年にノルウェーの監獄島バストイで起こった事件を題材にした映画「孤島の王」を見てきました。
 封切り3週目土曜日、全国4館東京では唯一の上映館のヒューマントラストシネマ有楽町シアター1(162席)12時05分の上映は2割くらいの入り。

 監獄島の少年院に送られてきたエーリング(ベンヤミン・ヘールスター)は、院長(ステラン・スカルスガルド)から絶対服従を言い渡されるが、周囲となじまず度々反抗し、重労働や食事半減、殴打打擲等の懲罰を受けることになり、収容者の中でも孤立する。退院間近の班長オーラヴ(トロン・ニルセン)はエーリングをたしなめるが、字の読めないエーリングにエーリングが持っていた手紙を読んでやるなどするうちに次第に打ち解け、エーリングに密かに協力するようになる。エーリングはある夜保健室の鍵を盗んでボート小屋からボートを出して脱走し、一躍英雄となるが、連れ戻されてしまう。エーリングの脱走を批判したオーラヴは、エーリングからブローテン寮長(クリストッフェル・ヨーネル)が同じ班の少年に洗濯室で性的な奉仕を強要しているのは違法じゃないのかと言い返され、院長に寮長の仕業を訴えるが、院長から叱責される。強要を受けていた少年が自殺し、不幸な事故だという寮長に、少年たちから反抗の声が上がり、寮長は島を去って行った。オーラヴが刑期を終えて島を出る日、寮長が島に戻ってきて、寮長は院長の使いで本土に行っていただけだと知り、ショックを受けたオーラヴは・・・というお話。

 部外者の目の届かない孤島で、支配者・管理者たちが権力をふるい、収容者たちを虐げ屈辱的な扱いを続ける中で、虐げられていた少年たちが分断統治の罠から出て次第に連帯感を持って行き、権力者に反乱を起こす。最後は負けるとわかっていても、汚い権力を許せず、とにかく闘いたいという心情には、共感してしまいます。軍隊に制圧される様は、機動隊に制圧される全共闘活動家のようでもあり、屈辱を堪え忍んだ少年たちが爆発する様は西部劇のようでもありましたが。
 一匹狼と優等生ということでそりが合わなかったエーリングとオーラヴの間に次第に友情が芽生えていく様子、そして不良少年のはにかみや初心さの描写も、なかなかのできだと思います。

 ヒューマントラストシネマで、今年になってから映画鑑賞のマナー告知フィルムで「覚えにくい名前ですが」とステラン・スカルスガルドが登場していて予告編代わりにすり込まれていたので、まぁ見ておこうかくらいの気持ちで見に行ったのですが、わりと拾いものだったかも。

 ラスト間近のシーンは、ノルウェーの映画監督も「タイタニック」への憧れがあるのかと、ちょっと複雑な思いを持ちました。カミさんは、あのシーンはディカプリオの美しい顔だからこそで、この映画では全然タイタニックを連想しなかったというのですが・・・

(2012.5.12記)

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