庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「イントゥ・ザ・ウッズ」
ここがポイント
 予想よりはグリム童話の設定に忠実だが、シンデレラの変化と成長に注目したい
 パン屋の夫の立場からは終盤は哀しい。巨人妻の立場からも

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 おとぎ話の主人公たちの交錯とその後を描いたブロードウェイミュージカルを実写化した映画「イントゥ・ザ・ウッズ」を見てきました。
 封切り4週目日曜日、新宿ピカデリースクリーン1(580席)午前11時25分の上映は7割くらいの入り。

 3晩続けて開かれる舞踏会に行きたいシンデレラ(アナ・ケンドリック)、おばあさんの元へパン屋から盗んだパンを届けに行く赤ずきん(リラ・クロフォード)、乳の出なくなった牛を売りに行くジャック(ダニエル・ハトルストーン)、そして子どもを身籠もらない理由が昔父(サイモン・ラッセル・ビール)が妊娠中の母が食べたがった隣の魔女(メリル・ストリープ)の庭に育つ野菜を盗みその際に魔法の豆を持ち帰ったために魔女に老婆になる呪いがかかり憤激した魔女が代々子どもが授からない呪いをかけたためと知り魔女から呪いを解くためには3日後の真夜中までに赤いずきんと白い牛とトウモロコシのように黄色い髪と金の靴を集めるようにいわれたパン屋夫婦(ジェームズ・コーデン、エミリー・ブラント)が、それぞれの願いを胸に森に入り、パン屋の夫は、妻が父の上着から見つけた魔法の豆でジャックから牛を買い、赤ずきんを助けてずきんをもらい、パン屋の妻は魔女がパン屋の母から奪って連れ去り塔の中に囲っていたラプンツェル(マッケンジー・マウジー)から黄色い髪を盗み、金の靴を片方はいて逃げるシンデレラから自分の靴と交換に金の靴を受け取るが…というお話

 原作がブロードウェイミュージカルでディズニーじゃないからなんでしょうけど、グリム童話がわりと忠実に採られています。
 シンデレラには魔法使いもカボチャの馬車も登場せず亡き母の墓での願い事で金銀のドレスが登場し鳥たちがシンデレラの願い事を叶えてくれます。灰の中から豆を拾うのが1回とか、王子から逃げ帰ったシンデレラが飼育小屋や樹の中に隠れるシーンがない、シンデレラの父が出てこない、義理の姉たちが足を切って靴を履いたのを鳥たちの告げ口じゃなく従者が気づくなどの違いはありますが、それは展開を速くするためでしょう。でもハシバミの木が大木になっているのは変える必要もないのにと違和感を持ちました。
 グリム童話では、舞踏会では王子を独占して一緒に踊り続けながら王子を撒いて逃げ帰る灰かぶりの気持ちは今ひとつわからず、謎の女・不思議ちゃんの印象ですが、この映画では、揺れる思いを語り、いったんは王子の選択に委ね、そしてその後にはあの家は悪夢、王室は夢だが、自分はその中間がいいと自分で選択するという変化と成長が描かれています。
 でも、タールを撒かれて金の靴が片方取れなくなった城の階段で、その上に座り込んでも寝転んでも服にはタールが張り付かないのはなぜ?

 ストーリーの中心となるパン屋夫婦。一人で森へ行く夫に、付いて行ったり自分の道を行って奮闘する妻のかいがいしさとたくましさが印象的で、妻の奮闘に次第に妻に感謝し妻の存在を認めた夫が二人で実現しようと言いだし、夫婦愛が実っていくかと思うのですが、全体のハッピーエンドを覆す後半の流れの中でこの夫婦も暗転します。これまたディズニーらしからぬ展開で、それも一興ではありますが、パン屋の夫の立場からは、哀しい。
 4つのアイテムに、自分は触ることができないという魔女。そういいながら、自分が囲っているラプンツェルの髪には平気で触ってる。トウモロコシのような黄色い髪と言ってる時点でわかってるはずなんだけど、まぁおとぼけの味を出してるというところなんでしょうか。

 赤ずきんが、おばあさんに持っていくパンが、母親が焼いたり持たせたのではなく、パン屋から盗んでいくというのがたぶん一番大きな改変だと思いますが、これはどうしてそうしたのでしょう。そうしたわりには赤ずきんがそれほど不良っぽいわけでもなくすれているように思えるわけでもないのですが。赤ずきんに母親がいないとしたら、赤ずきんはなぜおばあちゃんと一緒に住んでいないのかとか、より疑問に思えてしまいますが。

 そして、ジャックに夫を殺された巨人妻がかわいそう。最初はジャックをかばってやったのに、ただの泥棒としか言いようがないジャックに怒って追いかけた夫をジャックに殺され、それで怒って地上に降りてきたら自分がやられでは…
 魔女が最後にやけくそになって魔法の豆をまき散らし、豆がたくさん天に向かって蔓を伸ばしましたが、巨人は2人だけしかいないのでしょうか。私が脚本を書くなら、そういう流れならエンディングは巨人を続々地上に登場させて、巨人にフォークダンスでも踊らせますが。
(2015.4.6記)

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