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たぶん週1エッセイ◆
映画「ゴーストライター」

 予告編によれば「ロマン・ポランスキーが放つ映画史に刻まれるサスペンスの傑作」とかいう「ゴーストライター」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、全国で8館東京で3館の上映館の1つヒューマントラストシネマ有楽町の午前10時20分の上映は満席。観客層は中高年中心で一人客も割と多め。

 アメリカ東部の孤島に滞在中の元イギリス首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自伝を執筆中の補佐官マカラが溺死体で見つかり、その後任者に選ばれたゴーストライター(ユアン・マクレガー)は、ラング滞在先でインタビューを始めるが、ラングの盟友の元外相ライカート(ロバート・パフ)がラングが在任中にイギリス軍にイスラム過激派を違法に逮捕させて拷問して殺害したことを戦犯として告発したことからラングの滞在先はデモ隊とマスコミに包囲される。ラングのインタビューの傍ら、マカラの原稿と行動を調べ始めたゴーストライターは、次第にマカラの死因に疑惑を感じ、また政治に興味を持たなかったラングが政治家となった経緯にも疑問を感じるようになる。マカラの資料を探りマカラの足跡をたどり始めたゴーストライターは追跡者に追われるが・・・というお話。

 労働党のトニー・ブレアがなぜブッシュのイラク戦争に簡単に追随しのめり込んでいったのか、そのことに疑問を持ちあるいはイギリス人としてまたは労働党員・シンパとして誇りを傷つけられた人々が、溜飲を下げるというか慰めを求め傷をなめ合うようなニーズに合わせた映画かなというように思えました。ミステリーだから、さすがに謎解き・落ちを書いたら身も蓋もないという性質の作品だから、それ以上書きませんが、そういう骨格はちょっと安直な感じ。
 ラング夫婦のかかあ天下ぶりというか、ラングの無能というか凡庸さも、ブレア嫌いの人向けにやってる感じがしますし。
 そういう政治臭が、イギリス政治を身近に感じない身には、違和感を感じさせ、もう少し政治を背景に離して描いた方がサスペンスとして楽しめるのだが・・・と感じてしまいました。

 ミステリーとしては、ラングとエメット教授(トム・ウィルキンソン)の関係が、ちょっとうまく整理・処理し切れていない感じがして、最後ストンと落ちない感じがしました。
 ラストとの関係で、アメリア(キム・キャトラル)の位置づけも、私にはちょっとわかりにくいところが残りました。
 落ちも、ちょっとブラックな感じはいいんですけど、その秘密の発覚のところはそこまで引っ張ったらもう少し気の利いた落とし方を期待したくなるんだけど、という感じがします。
 雰囲気はいいんですが、「映画史に刻まれる」とか「現代最高峰」とかいうのは、無理があるように思います。

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