庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「僕の初恋をキミに捧ぐ」
ここがポイント
 幼い2人のあどけなさとひたむきさと運命づけられた不幸と悲恋。どれだけ身構えていても泣きます
 しかし、そこで泣き尽くしてしまうのと、制作サイドの泣かせてやる姿勢が露骨で、後半はちょっと引く
 子役にやらせるキスシーン、見ている分には微笑ましいけど、こういうことやらせていいのか疑問に思う

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 心臓病のため20歳まで生きられないと宣告されている青年と幼なじみの女性の悲恋純愛映画「僕の初恋をキミに捧ぐ」を見てきました。
 封切り3週目日曜日午後も満席。先週満席で入れなかった(で、携帯彼氏行き)ので、リベンジで予約して見ました。観客の9割以上が若い女性。大半が女子中高生同士で、カップルさえまれ。男同士で見に行くにはちょっと勇気が要りそうな状況。

 幼い頃から心臓病で入院を繰り返す逞(これで「たくま」と読む。両親の込めた願いが切ない:岡田将生)と、母を失い父(これが逞の主治医:仲村トオル)の勤務先に付いていくうちに幼い逞と知り合い、恋して8歳にして将来を誓い合う繭(井上真央)。勉強はできるが食事制限と運動禁止を言い渡されて体育はいつも見学の逞と、スポーツはできるが勉強は苦手の繭。自分の頭の中にはいつも繭がいるのに繭の頭の中は逞の病気のことばかり、逞がいつ死ぬかと脅えてばかりと思いつめた逞は、生きているうちに繭と別れるために超名門校を受験するが、逞にどこまでも付いていく繭の執念の前にあっさり挫折。でもその後も逞の前には同じ心臓病を病む美女照さん(原田夏希)、繭につきまとう「学園のアイドル」鈴谷昂(細谷よしひこ)が現れたりして若干の揺れがあり、そして逞の病気が進み・・・というお話。

 映画だし、原作も漫画だし、主演井上真央だし、「ありえないっつーの!」(すでにこれが、古い)ってエピソードだらけですが・・・中3になって簡単な英文和訳で立ち往生していた繭が超名門高校に主席で合格とか、それを同級生にも知られなかったとか、子どもの頃から体育はいつも見学の逞が体育万能の「学園のアイドル」に繭を賭けた100m走で勝つとか、無理でしょ、いくらなんでも。それに逞の心臓病。病名は不明ですけど、心臓の成長が体の成長に追いつかないから20歳まで生きられないということでしたが、鈴谷の父も同じ病気で死んだって、大人なんだからもう体の成長もないだろうに。
 難病で余命が限られという設定での恋愛ものですから、難しいこと言わずに泣かせればいいのって映画でしょう。その線では十分に成功していると思います。最初に出てくる8歳の逞のあどけなさと繭の愛らしさとひたむきさ、その幼い2人がすでに逞の病気と余命を知っていてそれにも関わらず将来を誓い合う姿。それだけで十分に泣けます。ただ、その幼い時代の映像で十分に泣いてしまうためか、中高生時代には逞が繭の将来を考えて別れようとしたりする姿が中途半端に入ってバタバタするためか、後半は今ひとつ泣きにくかったように思えます。ラスト前の教会でのエピソード、賛否両論あるでしょうけど、私にはグロテスクに思えてむしろ涙引きました。

 ほぼ同じ時期に上映している「私の中のあなた」と類似の状況設定ですが、「私の中のあなた」が家族愛と問題提起とさわやかさを表現・志向しているのに対して、「僕の初恋をキミに捧ぐ」はひたすら悲恋と泣かせを志向しています。興行的には「僕の初恋をキミに捧ぐ」の方がもちろん圧勝ですが、いつまでもそれでいいのかなぁという気もします。
 この映画の涙と感動にかなり貢献している8歳の逞と繭を演じた子役たち。微笑ましいし、映像としても感じさせるシーンなんですが、この2人の子どものキスシーン、こういうことしていいのかなぁと思います。子どもが自分で好きな子とキスするのはいいですよ。でも、これくらいの年の子どもに、好きな子だから、自分がしたいから、ではなくて、役柄だからとキスさせちゃうのって、映画作っている大人たちの良識を疑ってしまいます。

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