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たぶん週1エッセイ◆
映画「お家をさがそう」

 アカデミー賞受賞監督たちの日本では公開されにくい最新作を上映するという「監督主義プロジェクト」の第3弾「お家をさがそう」を見てきました。
 封切り6週目日曜日、全国唯一の上映館ヒューマントラストシネマ渋谷の午前10時30分の上映は2〜3割の入り。年齢層はばらけてましたが一人客が多数派。

 コロラド州に住む非婚カップルのバート(ジョン・クラシンスキー)とヴェローナ(マーヤ・ルドルフ)は、マーヤが妊娠6か月となりおなかが目立ってきたところで、近くに住むバートの両親を訪ねたが、両親が出産予定の1月前にベルギーに移住する計画を立てていることを聞かされ、バートの両親が孫と住みたいだろうと考えていた思惑が外れ、家庭を築く場所を考え直そうとする。ともに会社勤めでない2人は、ヴェローナの元上司やヴェローナの妹が住むアリゾナ、バートの幼なじみが住むウィスコンシン州、大学時代の友人カップルの住むモントリオール、バートの兄の住むフロリダを次々と訪れるが、それぞれの家庭の裏側を見せつけられ、理想の家庭・隣人とは・・・と考え込まされ・・・というお話。

 友達カップルのバートとヴェローナ。バートから結婚を申し込まれても意味がないと拒否し続け、どっしりと落ち着いている(おなかが大きいからそう見えるということもあるかも)ヴェローナが主導的だけども、時折見せるヴェローナの不安・悲嘆に対してなんとか支えようとする優しさを見せるバートとの関係はとってもいい感じ。予告編でも採られている「私たち34歳(バートが33歳と訂正)になっても基盤がない」と嘆くヴェローナをバートが1つの毛布にくるまって慰めるシーンとか、フロリダのバートの兄の家の庭のトランポリンでの会話とか、いいなぁと思う。
 よそに理想を求めるストーリーは、言わずもがなの「青い鳥」パターンが予想されますが、しみじみと情が通じるこのカップルがよそに理想を求める必要があったのか自体、どうかなという気がします。
 ただ、同時に、バートらが疑問に思ったカップルがすべて不幸かというと、それも疑問に思います。セクハラおやじそのものといえるヴェローナの元上司リリーと白けきって会話もない夫と子どもたちは、一番不幸そうですけど、リリーの豪快というか楽天的な素質で乗りきれるかも知れない(リリーは主観的には幸せかも)。新興宗教的な独自の価値観(子どもは抱きしめて育てるべきで子どもを押しやる乳母車は不幸の象徴とか)に生きる夫に共鳴して寄り添うLNも、人付き合いは難しいだろうけど大学教員として地位も確立してるわけだし、夫婦仲自体はとてもよさそう。大学時代の友人カップルは、流産を繰り返すマンチの哀しみを引きずっているとはいえ、トムの優しさと明るい養子たちに囲まれ、基本的には幸せな生活を送っているはず。
 バートとヴェローナが他よりも幸せという読み方よりも、それぞれのカップルがそれぞれの事情を抱えながら生きている、隣の芝生は青く見えるけど、それぞれの問題点を認識しながら自分とパートナーのよいところを見つめて生きていこうよと読んだ方がいいだろうなと思います。

 冒頭、ヴェローナの妊娠がわかるシーンが、Hだけど(PG12指定です)、このカップルの関係を示していていい感じ。でも本当にこれでわかるのかな?

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