庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「アバター」
ここがポイント
 CGの美しさと迫力だけでも十分に楽しめる映画
 アメリカ先住民ナバホ族に対する仕打ちやアメリカが敢行する戦争への批判に満ち、ハリウッドも捨てたものじゃないと思える(この作品が前評判に反してアカデミー賞を逃し、イラク駐留米軍を賞賛する「ハート・ロッカー」が受賞したわけですが)
  

 人類が遠い惑星パンドラで貴重な地下資源の採掘のために先住民をスパイし立ち退かせ攻撃するために先住民とのDNA結合体を作成してアバター(分身)としてコントロールするSFアドベンチャー映画「アバター」を見てきました。
 封切り3週目日曜日、2Dの方だったこともあってか、半分くらいの入り。

 負傷して下半身不随となった海兵隊員ジェイク(サム・ワーシントン)は、死んだ双子の兄の代わりに、惑星パンドラで貴重な地下資源の採掘のために先住民ナヴィ(Na’vi)と人類のDNA結合体を作成してアバター(分身)として遠隔操作し、ナヴィを調査し立ち退かせるという計画に参加することになる。全く訓練を受けずにパンドラを訪れたジェイクが操作するアバターは、あっという間に仲間からはぐれ恐ろしい動物たちに襲われることになるが、ナヴィのオマチカヤ族(Omaticaya)のリーダーの娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ:CGだけで生の顔は一度も出てきませんけど)に助けられ、オマチカヤ族の集落でネイティリに導かれて戦士としての修練を積み、仲間と認められる。アバターと人間は神経がリンクされ一方が睡眠中に他方が覚醒する関係にあり、ジェイクはアバターとしてナヴィ族に受け容れられて知ったことを基地の人間たちに報告し、自然と結びついたナヴィの暮らしとパンドラの植物を結ぶ情報のネットワークなどの知識が人間に集積されていく。研究者の間ではナヴィとパンドラへの理解がなされていくが、地下資源採掘を急ぐマイルズ大佐(スティーヴン・ラング)ら軍人たちはジェイクの立ち退き説得が功を奏さないのを見てナヴィの暮らすホームツリーに武力攻撃を仕掛け・・・というお話。

 前半の惑星パンドラの神秘的な自然の美しさ、訓練し動物を操るジェイクとネイティリの姿と交わす視線に溢れる逞しさと喜びは圧巻です。後半はスターウォーズ風の戦闘シーンが続きます。全体を通じて、CGの美しさと迫力に圧倒されます。そういう映像としての魅力だけを見ても、十分に楽しめる映画だと思います。
 ストーリーは、自然と共生し自然の英知を生かして平穏に暮らす先住民を、自己の欲得のために立ち退かせようとし圧倒的な武力で攻撃する人類の横暴さと、最初はその手先となっていたがあまりの横暴ぶりを見て先住民側に立つことになるジェイクと一部の研究者たちと先住民の連帯と共闘を軸としています。自然との共生、信頼と共感、そして愛がテーマになります。ネイティリが見せるジェイクへの愛、裏切りを知ったときの怒りと切なさ、再度結ばれた絆といったあたりに、CGの美しさを超えて心をつかまれました。
 まぁ、先住民の神がなぜ人類の手先としてスパイに来たジェイクを受け容れたのか、ネイティリがジェイクに心を奪われたのかは、今ひとつしっくり来ませんけどね。

 見ていると、自己の利益のために地域の住民を蹴散らして武力行使に走る米軍と現代の戦争に対する反感を、自然と持ちます。「地球のエネルギー問題を解決する希少な地下資源」の鉱山に居住し立ち退きを迫られ武力攻撃を受ける先住民ナヴィ(Na’vi)の姿は、当然に、アングロ・サクソンの移住・侵略によって豊かな土地を追われて荒野に追い出された挙げ句にその荒野にウラン鉱山があると判明してさらに立ち退きを迫られウラン採掘に低賃金で酷使され健康を害していったアメリカ先住民ナバホ族(Navajo)とダブります。それだけじゃなくて、アメリカが行っている他の戦争にもイメージ的にダブってしまいます。こういう映画をこれだけ大々的に作れるって、ハリウッドもまだ捨てたものじゃないかも。

 私としては、いろいろな面で見てよかったと思える映画でした(前日見た「ずっとあなたを愛してる」もしみじみ映画でよかったし、大作・アドベンチャー系では「アバター」を超える映画はそうそう出ないでしょうし、今週末は映画ファンとしては実に幸せだと・・・)。
 映画と直接には関係ないんですが、先住民の神の名前が、取引履歴の開示が徹底的に遅い、裁判は徹底的に引き延ばす、過払い金をなかなか払わないスジ悪サラ金の名前と同じなのは、気が滅入りましたが(アメリカのサイトで確認したらEywaでEiwaじゃないだけマシですけど)。

(2010.1.11記)

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